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特別教本:目次公開

《改訂版》2014年GWセミナー特別教本 『 幸福のための仏教哲学  平等社会の道と自己を知る智恵』 
(2015年01月27日)

《改訂版》2014年GWセミナー特別教本
『 幸福のための仏教哲学  平等社会の道と自己を知る智恵』

■目次   ★第1章をご紹介       購入はこちらから

第一章 幸福のための仏教哲学: 感謝・知足・分かち合い 6

1.はじめに ................................................................................. 6

2.現代主流の幸福観と、仏陀の説いた幸福観 .................................... 7

3.楽の裏の苦: 際限のない欲求がもたらすさまざまな苦しみ ............... 7

4.足るを知る幸福: 充足し落ち着いた、明るい温かい心 ..................... 8

5.分かち合いの幸福: 温かい心と良好な人間関係の恩恵 ..................... 8

6.感謝・知足・分かち合いと、慢心・不満・奪い合い ........................ 9

7.二つの心の状態の違い ............................................................... 9

8.際限のない欲求がもたらす、不満・不安・後悔 .............................. 9

9.今ここの幸福: 真に実在するのは今の幸福だけ .............................. 10

10.逃げ切れない苦しみの問題 ......................................................... 10

11.苦の裏に楽がある: 苦しみを和らげる方法 .................................  11

12.苦しみの恩恵: 執着の放棄・慈悲・成長 .................................... 12

13.感謝がもたらす自己実現の力: 継続的な努力 ..............................  13

14.継続的な努力に必要な健康・長寿と、心の働きの関係 ..................... 13

15.東洋思想の智恵が説く健康法 ...................................................... 14

16.感謝と分かち合いがもたらす他者の協力:自分の力だけでは達成できない 14

17.強運: 長寿・人徳などがもたらす ............................................. 15


第二章 真の平等社会への道: 仏陀の四無量心の智恵 ... 16

1.はじめに: 平等な社会の希求 ...................................................... 16

2.行き詰まった平等社会の希求 :共産主義の失敗 .............................. 16

3.自由競争と社会福祉の間で葛藤する現代 .......................................... 16

4.精神面の幸福の希求 :宗教の活性化とその問題 .............................. 17

5.仏陀の智恵・四無量心による平等な幸福 .......................................... 18

6.間違った幸福観をもたらす心の三つの毒 :無智・貪り・怒り ............ 19

7.仏陀の広大な四つの心 :慈・悲・喜・捨 ....................................... 19

8.慈 :幸福を貪り独占せずに、分かち合う ....................................... 20

9.悲 :苦しみを分かち合うことによる幸福 -- 智恵と慈悲の体得 ...... 21

10.皆にそれぞれに幸福の道がある ...................................................... 22

11.喜: 他の幸福を喜ぶことによる幸福 ............................................. 22

12.すべての幸福・最高の幸福を得る「喜」の智恵 ................................. 23

13.捨: 分け隔てなく平等に愛する心 ................................................ 24

 

第三章 心を開く: 自分自身を知る智恵 ........................ 25

1.はじめに ................................................................................. 25

2.現代人の心の歪み: 自他の比較の圧力の中で ................................. 25

3.自分の暗部を忘却する不利益 ...................................................... 26

4.被害妄想の可能性 ..................................................................... 27

5.自分の問題に対応できない三つのパターン .................................... 27

6.自分の問題を直視する術: 感謝と逆転の発想 ................................. 28

7.自分の長所を支える存在への感謝の不足 ....................................... 28

8.反省と感謝によって開かれる心 ................................................... 29

9.反省と感謝は一つになる ............................................................ 29

10.ひかりの輪が推奨する、感謝と反省の修養法 ................................. 30

11.感謝と反省の究極は、自と他の区別を超えた広大な心 ..................... 30

12.万物を平等に尊重する心 ............................................................ 31

第四章 上級編: ワンポイント法則集 ........................... 32

1.最新版: ひかりの輪の仏教の瞑想の学習と実践 .............................. 32

(1)智恵・悟りの瞑想の学習と実践
(2)供養・分かち合いの瞑想の学習と実践
(3)懺悔・反省の瞑想の学習と実践
(4)菩提心・慈悲の瞑想の学習と実践

2.輪のクンダリニー瞑想: 万物一体・天地一体の悟りの瞑想 ............ 33

3.万物が平等な仏性の顕現という思想: 煩悩即菩提から .................. 35

4.三悟心経の裏と表の二つの意味合い ............................................. 36

5.自分と他者の間の善悪・優劣に関する一元の法則 ........................... 37

6.「輪」という言葉が象徴する三つの一元の思想 .............................. 38

  以下第1章をご紹介します。

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第一章 幸福のための仏教哲学: 感謝・知足・分かち合い

 

 

1.はじめに

 

本章では、何が幸福であり、その道かという、人にとって根本的なテーマに関して、検討したいと思う。

 

その前に、本書は、物質的には豊かな現代社会が、行き詰まっている一面があることを前提としている。明治維新以来の日本の歴史が示すように、現代社会は、軍事力等による発展、そして、お金や科学技術による幸福を求めてきた。しかしながら、軍事力は、大日本帝国の敗戦をもたらし、経済成長は、バブルの崩壊以降長らく停滞し、原発事故は、科学技術が万能ではないことを示した。

 

そして、ある調査によれば、所得が年間1万5千ドル(150万円ほど)を越えると、それ以上所得が増えても、幸福を感じる人の割合が必ずしも増えないという。すなわち、お金による幸福には、限界があり、頭打ちになるのだ。

 

そして、日本人にとっての年間1万5千ドルとは、生活保護や最低賃金などで保障される額であり、ある意味で、社会福祉等の政策で、ほとんどすべての人が得ている状態ともいうことができる。すなわち、日本のように物質的に豊かな社会は、これ以上の幸福は、お金では買えないところまで来たということができる。

 

また、そうでもなくても、先般話題となったTPPの導入など、21世紀の日本は、世界的な経済競争の波の中で、20世紀のように、アジアで突出した経済大国・経済競争の勝ち組でいられるはずもないだろう。さらに、人口減少・高齢化社会・膨大な財政赤字などの負担がある。こうして見ると、国民の富を大幅に増大させることにも無理があり、むしろ個々人の家計や国家の財政支出の削減など、質素倹約を求められる可能性がある。

 

こうして、日本は、物質面では、成熟した社会とも、行き詰まった社会ともいうことができるだろう。よって、今後の幸福の追求には、精神的な面が重要になってくるのは間違いなく、それを支える新たな思想を必要としていると思う。

 

 

 

2.現代主流の幸福観と、仏陀の説いた幸福観

 

それでは、現代社会で主流をなし、私たちの常識となっている幸福観と、仏陀の智恵が説く幸福観について、その二つを対比する形で検討したい。

 

まず、現代主流の幸福観は、喜び・楽を際限なく求める傾向がある。これは、国家が経済成長を絶えず求めてきたことにも通じる。それと同じように、苦しみに関しては、それをなるべく避けようとする。

 

しかし、仏陀の智恵に基づく幸福観は、喜び・楽を際限なく求めても、得られない喜び・楽があり、その裏側に、さまざまな苦しみが生じると説く。また、苦しみに関しては、苦しみから逃れようとしても、逃れきれない苦しみがある一方で、苦しみにはさまざまな恩恵もあると説く。

 

すなわち、楽の裏に苦があり、苦の裏に楽があり(苦楽表裏)、単に楽を追求し、苦しみから逃げようとしても幸福にはならないと説くのである。これを言い換えれば、すべての人が、幸福になりたいにもかかわらず、不幸な人が多いのは、幸福になる正しい道がわかっていないからであるということになる。

 

 

3.楽の裏の苦: 際限のない欲求がもたらすさまざまな苦しみ

 

なぜ際限なく求める傾向があるのかというと、人は、何かの楽を得た時は、それを喜ぶが、それで永久に満足するということはない。しばらくすれば、それに慣れてしまって、当然のものとし、いっそうの楽を得なければ、喜びを感じられない心理状態になりやすい。たとえ多くの恵みを受けていても、それを当然と思って、ほとんど忘れてしまい、いっそうの恵みを欲するのである。

これを言い換えれば、楽を得た時に感じた喜びが、しばらくすると「もっと欲しい」という欲求に変わるということでもある。そして、この欲求は、満たされなければ、ストレスになるのはいうまでもない。

 

よって、こうして際限なく求めていくと、その先にはさまざまな苦しみがある。求めても得られない苦しみ、得たものさえ失う苦しみ、求めて他と奪いあう苦しみなどである。そして、長期的な視点から見れば、年をとり、老い、病み、死ぬ中で、すべてを失っていくことになる。

 

4.足るを知る幸福: 充足し落ち着いた、明るい温かい心

 

そこで、仏陀の智恵が説く教えは、楽を際限なく求めるのではなく、①感謝の心を深めて、②足るを知り、③さらには、他と幸福を分かち合う道である。

 

ここで、第1に来る、感謝が重要である。私たちは、思い起こせば、すでに多くの恵みを受けている。特に、日本社会は、70億の地球人口の中では少数派である豊かな先進国の一つであり、その先進国の中でも、世界最高レベルの長寿と安全な社会を享受している。豊か、長寿、安全の三拍子そろった日本社会は、70億の中の1億に過ぎない。こうした普段はまったく意識しない(忘れている)恵みを思い起こすと、まさに膨大な恵みを受けていることがわかる。

 

この感謝の心が生じてくると、「もっと欲しい」という乾いた心が和らぎ、明るく、温かく、充足して、落ち着いた、平安な心をもたらす。いわゆる、「足るを知る」・「知足」という境地である。それは、際限なく求めて得た時に感じる幸福とは、別種の幸福であり、より安定した心をもたらす。

 

求めて得た時の幸福は、幸福というよりは、「興奮」に近いだろう。その時は喜びだが、しばらくすると薄まり、それでは満足できずに、「もっと欲しい」という欲求が生じ、さまざまな苦しみに変わっていく。これは、本質的に、構造的に、不安定な心をもたらす。

 

 

5.分かち合いの幸福: 温かい心と良好な人間関係の恩恵

 

また、感謝の心は、もう一つの幸福、分かち合いの幸福をもたらす。

感謝の心を深めると、その延長上に、自分の幸福を支えている人たちの存在を意識するようになる(さらに進むと、知人に限らず、万物の支えを意識するようになる)。そこから、自分が得た幸福を、他と分かち合う心が生じてくる。すなわち、恩返し、幸福の還元である。

 

そして、他者と幸福を分かち合うことで、さまざまな恩恵がもたらされる。

まず、温かい心が生じる。そして、良い人間関係が生じ、その結果、他との関係で、物心両面での恵みが生じる。

 

 

 

6.感謝・知足・分かち合いと、慢心・不満・奪い合い

 

しかし、普通は、喜びを得た時に、それを他と分かち合うのではなく、もっと自分が得たいと考える。自分が独占したいとか、他の幸福を妬ましく思う。

感謝のない心には、自分の幸福が他者・万物のおかげで得られている、という認識がないのである。それは、あたかも、自分は自分の努力=力で自分の幸福を得たのだと考えている。これは客観的には、慢心であり、感謝の不足である。

 

こうして、

①感謝=足るを知る=他との分かち合い、という流れ、

②慢心=不満足・際限のない貪り=他との奪い合い、という流れ

があることがわかる。

 

 

7.二つの心の状態の違い

 

ここで、上記の二つの心の状態の違いについてまとめておこう。

 

まず、感謝・知足・分かち合いによる幸福は、静まった、温かい、広がった、明るい心の状態をもたらす。仏陀が説く慈悲の心に近づく。

一方、際限なく求める場合は、結論から言えば、不安定な心の状態になる。求めたものを得ることができた時--例えば、他に勝利した時は、興奮・歓喜に酔う。しかし、逆の時は、激痛を感じる。そして、得られるか得られないか、どうなるかわからない未来に対する不安を抱き続けることになる。

 

そして、最終的にどうなるか。

長期的に見ると、感謝・知足・分かち合いの幸福は、年をとっても、その修練ができればできるほど、逆に増大していく。幸福が尻上がりになっていく。

一方、際限なく求める場合は、老い病み死ぬ中で、徐々に、求めても得られるどころか一切を失う方向に向かうため、苦しみの方が増えていく。幸福が尻すぼみになるのである。

 

 

8.際限のない欲求がもたらす、不満・不安・後悔

 

際限なく幸福を求め、感謝がない心では、どんな幸福を得ていたとしても、今得ている幸福を喜ぶことができない。今ある幸福とそれに対する感謝には、あまり意識が向かわず、「もっと欲しい」という欲求=不満があって、未来にもっと得ることに心が向かっているからである。

 

しかし、その期待の裏側には、「それが得られないのではないか」という不安も抱えている。さらに、現在に不満があるということは、その現在を作った過去には、多かれ少なかれ、後悔がある。不満を感じる現在を作ったのは、過去だからである。

 

こうして、現在に不満、未来に不安、過去に後悔という苦しみが、心の中に絶えず渦巻いている。それが死ぬまで続いていくことになる。

 

 

9.今ここの幸福: 真に実在するのは今の幸福だけ

 

しかし、感謝・知足・分かち合いの心は、まさに今得ている、今ここにある幸福を喜び、楽しむことができる心である。そこには、現在への不満や、過去への後悔はなく、未来への不安も少ない。

そして、私たちが生きているのは、今この瞬間である。未来や過去は、厳密に言えば、人の思考の中の産物であり、真に実在するのは今現在だけである。真に実在する幸福も、今の幸福だけである。この実在する幸福を楽しむことがなく、際限ない欲求によって、死ぬまで、不満・不安・後悔の心だけで生きるとしたならば、なんともったいないことであろうか。

 

 

10.逃げ切れない苦しみの問題

 

さて、これまでは、際限なく楽を求める傾向は、さまざまな苦しみをもたらすので、感謝と知足と分かち合いが、真の幸福をもたらすという視点について述べてきた。

次に、苦しみに対して逃げようとばかりする傾向は、逆に苦しみを強め、さまざまな損失をもたらすことについて述べる。

 

まず、苦しみは、それをなくそうとして、なくすことができるならば、問題はない。しかし、現実には、逃げようとしても逃げられない苦しみが多いから、この世界では、多くの人が苦しんでいるのである。

そして、そうした苦しみの場合は、逃げよう逃げようとすることが、逆に苦しみを増している場合が多い。すなわち、苦しみへの嫌悪が苦しみの感覚を逆に増しているのである。

11.苦の裏に楽がある: 苦しみを和らげる方法

 

よって、そうした場合は、苦しみの裏には恩恵があることに気づいて、苦しみを前向きに受け止める方が、苦しみの感覚が和らぐ場合が多い。できれば、苦しみを喜びに変えていくように努めるのである。

そして、逃げよう、逃げようとしていた時には、どうにもならなかった苦しみをもたらす現象が、前向きに受け止めようとした後に、去っていくという経験をする場合も多い。不思議なことではあるが、よく考察すると、これには確かな因果関係もある。

 

 

12.苦しみの恩恵: 執着の放棄・慈悲・成長

 

そこで、苦しみがもたらす恩恵について考えてみる。まず、さまざまな苦しみは、自分が過剰に執着し、とらわれていることで生じている場合が多い。そうした場合は、苦しみの経験を通して、自分の過剰な執着・とらわれに気づいて、それを捨てることで、苦しみが解消する。

 

これは、以前は苦しみを感じた条件・環境でも、苦しみなく生きることができるということだから、より強く、より自由に、より幸福になったということができるだろう。

 

さらに、苦しみの経験の大きな恩恵は、同じような苦しみを抱えている他者の気持ちを理解し、それに対する優しい心・慈悲の心を培うことができるという可能性である。例えば、挫折・失敗といった苦しみの多い人の方が、他者への優しさという心の宝を得る機会があるということである。

 

また、苦しい時にできる非常に重要な実践が、苦しむ自分を支えてくれる他のありがたさを考えて、感謝の心を培うことである。逆に言えば、人は、自分が幸福な時は、あまり他の支えのありがたさを理解できない場合が多い。

 

そして、この他への感謝の心は、自分の力だけでなく、他の力を活かそうとする心にも通じるものである。自分や自分の幸福を得ることばかりに執着すると、他の才能・能力は妬ましいものになるが、妬みを越えて、他を活かし、自と他双方が、幸福になろうとする心は、非常に重要である。そして、これも慈悲の心の一部である。

 

こうして、仮に苦しみがまったくないとするならば、その人が、さまざまな意味で、精神的に成長することは難しくなる。とりわけ、仏陀の教えが最も重視する慈悲の心を持つことは難しい。よって、苦しみがまったくないことは逆に恐ろしいことであることがわかる。そして、苦しみにも感謝するという考え方が生まれてくる。

 

 

13.感謝がもたらす自己実現の力: 継続的な努力

 

次に、感謝・知足・分かち合いが、単に幸福な心をもたらすだけではなく、重要な物事を実現する上でいかに役立つかについて述べたい。いわゆる、自己実現、大願成就のための智恵である。

 

まず、ローマは一日にしてならず、継続は力なり、といわれるように、あらゆる重要な物事を実現する上では、継続的な努力が重要であることはいうまでもない。ところが、その道のりの過程では、時には、大きな失敗・挫折にあうものである。

 

しかし、感謝・知足の精神を持った人は、挫折に強いという特徴がある。挫折の際に、「自分はすべてを失った」と考える人は、挫折に弱く、立ち直りにくい。一方、挫折の際にも、「まだ自分はこうしたことで恵まれている」と考える人は、挫折に強いといわれる。よって、感謝の強い人は、挫折にも強いのである。

 

例えば、失業しても、「まだ自分には、良い家族や友人や健康がある」と考える人などである。すなわち、自分にないもの、失ったものを見るのではなく、自分に与えられているものを見ることである。一方、感謝が弱く、不満が強い人は、客観的にはすべてを失ってなどはいないのに、そのように感じて、立ち直ることが難しくなる。

 

また、前に述べたように、苦しみの裏には恩恵があると考え、苦しみにも感謝する心構えを持っている人は、当然挫折に強い。挫折や失敗は、視点を変えてみれば、よくいわれるように、成長・成功の元である。有名な発明王のエジソンが語ったように、何かをやって失敗したならば、「それでは成功しないことを知った」という意味で、「成功へのステップ」が進んだということでもある。

 

さらに、何かを失うことは、何かを得ることである。例えば、人との縁もそうだし、仕事・家庭を含めた時間の使い方もそうである。こうして、苦しみの裏側に喜びを発見できる人は、その時々の条件において、自分ができる最善の努力を成して、成長を続けていく。

 

こうして、自分の今の恵みや、苦しみの裏の恵みなどを意識し、感謝の心をもって生きる人は、挫折に強く、安定して継続的に努力することができる。

 

また、こうした、困難に強い、柔軟で粘り強い精神は、力みや焦りから生じる空回りを避けることができる。物事を達成しようとする際には、その欲求が強すぎると、力みや焦りが生じ、冷静さを失って、逆にマイナスに働く場合がある。

 

そのために、例えば、スポーツでも力みを抜くことが重要とされ、武術の世界でも、「勝つと思うな、思えば負けよ」という言葉がある。一般にも、「急がば回れ」、「果報は寝て待て」といった言葉があるのだろう。

 

 

14.継続的な努力に必要な健康・長寿と、心の働きの関係

 

継続的な努力の土台となるのが、健康・長寿である。そして、健康・長寿には、心の持ち方・心の安定が深く関係している。

 

まず、健康で長寿な人が、人生全体に渡る努力によって成し遂げる自己実現は、次元が違う。どんな分野でも、経験はものを言い、より長く従事することができれば、短い場合に比較して、大きな達成をすることができる。

 

例えば、家康が戦国の覇者になったのは、信長・秀吉よりも強かったからではなく、寿命が長かったのが、大きな要因である。このように、闘争・競争においても、長寿の人の場合は、競争相手の方が、寿命が尽きて、自ずと退いていくといったことさえ起こる。

 

そして、心の安定と健康・長寿は深く関係している。この点は、心と体の関係を研究する心身医学の発展とともに、最近はますます明らかになってきた。その中では、怒りが強い人に循環器系の疾患が多いとか、ストレスが癌に関係しているという指摘がある。性格と疾患の相関関係である。

 

逆に、感謝・知足・分かち合いの心は、前に述べたように、静まって安定している。それは、不満、怒り、ストレスとは正反対のベクトルである。実際に、感謝の精神が心身に良い影響をもたらすことが、医療専門家によって指摘されている場合もある。

 

また、最近目立っているメンタルな問題、心身症や鬱病などは、まさに、心の持ち方とダイレクトに関係している。感謝・知足・分かち合いの心が強い人は、先ほど述べたように、ストレスが少なく(ストレスに強く)、精神的に安定しているがゆえに、こうした心因性の健康問題を起こしにくい。

 

 

15.東洋思想の智恵が説く健康法

 

なお、ここでは少し脱線するが、西洋医学に加え、仏教・ヒンドゥー(ヨーガ)・仙道といった東洋思想の心身の健康法について言及したい。ヨーガの体操や呼吸法、仙道の気功、仏教の瞑想法は、体の中を流れる目に見えないエネルギー(気)を整える修行実践である。

 

これは、心と体の双方に、気の流れが関係していることに注目し、身体操作によって、それを整えると、心と体の双方に良い影響があるというものだ。「気」の流れを整えれば、「気持ち」が整い、また、「病気」にもなりにくいというのである。一方、「気」の流れが乱れれば、「気持ち」が乱れ、悪い気の流れ=「病んだ気」こそが、「病気」の原因だという思想である。

 

また、仏教・ヨーガ・仙道の健康法は、心身を一体と見ており、思考や行為の浄化(=善行の実践)を説く。さらには、心身と環境の繋がりも重視し、仏教では、自宅を含めた環境を清浄に保つことを第一の修行とする宗派もある。

 

こうした東洋の智恵と西洋の医学による健康法を組み合わせて、健康長寿を実現し、継続的な努力を行うための土台とするとよいだろう。

 

 

16.感謝と分かち合いがもたらす他者の協力: 自分の力だけでは達成できない

 

重要な物事は、自分一人の力では達成できない。多くの他者の協力が必要である。例えば、昭和の希代の実業家の松下幸之助は、「命じて動かせるのは100人までであり、1000人、10000人を動かそうとしたら、拝むほどの感謝の心が必要である」と語っている。

 

こうして、感謝・知足・分かち合いは、物事の達成に必要な他者の協力(=人の輪の力)を得るための土台となる。言い換えれば人徳を育むということができるだろう。逆に、慢心・不満・奪い合いの心は、その逆に、他者からの協力を失うことになる。

 

最近の政治家を見ても、H氏、I氏、W氏など、途中まで非常に成功していた人が、慢心に陥って不祥事を起こし、一転して他者の支持・協力を失い、失脚することが多いことは、よくわかるのではないだろうか。

 

17.強運: 長寿・人徳などがもたらす

 

物事の達成においては、天運が必要という見方がある。しかし、この運というのは、単なる偶然の産物ではないと思う。健康長寿の人は、長く努力を続けていれば、そのうち、物事を達成しやすい時期に恵まれる可能性が高くなる。

 

天運と関連して、中国思想には、物事を成す上で重視される要素として、「天の時」を得るということがあるが、健康長寿によって長く努力する人は、時という大いなる力を味方に付けたということもできるだろう。健康長寿=天の時・天運を得る可能性の増大ということである。

 

また、天の時という言葉とともに、「人の和」が重視される。人徳があり、他者の協力が得られる人は、人の和を形成しているということができる。そして、その人の和の中で、他者を通じて幸運を得る機会というものが増えるだろう。

 

また、感謝・知足・分かち合いの心を持つ人は、自己中心的な貪り・執着を越えているから、心に後ろめたさがなく、その志に集中することができる。言い換えれば、正しい誓願を立てることができる。こうした場合、その人の表層意識と潜在意識の双方が一体となって物事の達成に向かうことができる。これは、強い意志の力・集中力・継続力の源となるだろう。

 

 

 

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