教本と講義
ひかりの輪で使用している教本やテキスト、それを解説した上祐代表の講話などをご紹介しています。

2017年01月

  • 2016~17年年末年始セミナー心理学講義教本『アクセプタンス&コミットメント・セラピー』 (2017年01月10日)

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    『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
    ~マインドフルネスと価値ある行動~』

    第1部 理論編

    1.ACTは、行動主義心理学の「第3世代」

    前回(第35回)の心理学講義で、心理学の4つの大きな潮流(勢力)について勉強しましたが、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、その中の行動主義心理学に属します。他の3つは、フロイトの精神分析学、マズローの人間性心理学、トランスパーソナル心理学です。

    ACTは、行動主義心理学の「第3世代」に属します。

    「第1世代」は1950~1960年代、行動主義の名前の通り、目に見える行動を対象として研究されたもので、思考や感情は軽視していました。刺激-反応による条件付けで人の行動を捉え、人間を機械的なものと捉えていたこの「第1世代」の影響で、その後の行動主義も、人間を機械的にみるものだと思われてきました。

    「第2世代」は、認知を行動の変化を促す重要なものと捉えました。認知行動療法などがその代表です。1970年代です。

    そして、「第3世代」は、このアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)や以前に心理学講義でもとりあげたマインドフルネス認知療法です。これらは、アクセプタンス(受容)とマインドフルネスに重点をおいています。

    ACTの創始者は、アメリカのスティーブン・C・ヘイズ博士。1999年にACTの書籍がはじめて出版されました。

     

    2.ACT2つの柱

    (1)つらい思考や感情に対する効果的な対処 ~マインドフルネス~
    つらい不快な思考や感情に対して私たちは、巻き込まれて、翻弄されたり、また、抵抗したり、それを避けよう、排除しようとします。そのいずれも、思考・感情に囚われて苦しんでいる状態です。そのようにならないようにする対処法としてマインドフルネスがあります。

    マインドフルネスとは、
    ①今この瞬間の自分の外界や内界(心)の出来事にただ気づいている状態。
    思考・感情に巻き込まれないで、今の瞬間の思考や感情に気づくこと。
    ②抵抗・反発をせず心を開き、かつ執着・欲求もせず、対象に気づいている状態
    ③注意・気づきの範囲を広げたり、狭めたり柔軟性がある。

    ※マインドフルネスについては、第32回の心理学講義でも取り上げていますので、そちらも参照してください。今回のACTでの表現と少し違うところがあります。

    以下、第32回心理学講義『思考・感情・ストレスのコントロール ~心に巻き込まれないために~』から、マインドフルネスの説明のところを引用します。

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    マインドフルネスとは?

    では、マインドフルネスとはどのようなものでしょうか。
    マインドフルネスとは、注意深く今の瞬間に気づいている意識状態のことです。
    もう少し詳しく説明すると

    ①心を開いて、今この瞬間に十分に気づいている意識状態です。
    今この瞬間の自分の経験していることを、偏見をもたずに注意深く客観的に観察する。そのためには価値判断を加えずに、今という瞬間の体験と向き合うことが必要です。

    ②受け入れる
    ものごとを今のこの瞬間にあるがままの形で見る。
    私たちの心は通常、ものごとをありのままに受け取るのではなく、それに好き嫌いの色づけをして、自分の気にいるものへの欲求(愛着)と気に入らないものへの排除(嫌悪)、という「とらわれ」を生じさせます。そうではなく、そのままを受け入れ認識するようにします。

    ③常に初めて体験するように、予断をさしはさまないで、その瞬間を体験する。

    マインドフルネスは、東南アジアに伝わるテーラワータ仏教のヴィパッサナー瞑想がもとになっています。ヴィパッサナー瞑想は、瞬間瞬間の自分の心身の状態やものごとを観察し気づく瞑想で、お釈迦さまが説かれた四念処という瞑想に則った瞑想法です。

    四念処とは、身(体)・受(感覚)・心・法(現象)に対する観察です。

    * 身念処:そのときどきの身体の状態に気づきをもって見守る
    * 受念処:そのときどきの感覚に気づきをもって見守る
    * 心念処:そのときどきの心の状態に気づきをもって見守る
    * 法念処:現象・ものごとを気づきをもって見守る

    という観察です。経典には細かく観察法が書かれています。

    仏教の瞑想には、サマタ(シャマタ・止)瞑想、ヴィパッサナー(観)瞑想の2つがあります。それぞれどういう瞑想かというと、

    ◆サマタ(止)瞑想:心の働きを止め、静めていく瞑想。
    ひとつの対象に気づきを持って集中する。
    ◆ヴィパッサナー(観)瞑想:サマタ瞑想で心が静めた後、現象を客観的に観つめる瞑想。気づきの対象を広げてゆく。

    マインドフルネスはこの瞑想を基にしたものです。
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    (2)本当に意味ある、価値ある人生を送るための行動
    思考・感情に囚われ、巻き込まれ、翻弄され、その苦しみから逃れようとして、アルコール・薬物・ギャンブル・暴食・引きこもり・寝る・先延ばしなどの行動をとり、本来やるべき、建設的な人生に価値ある行動をとれない、という状態を改善します。

    ACTは、つらい思考・感情があっても、それを放っておいて、やるべきことをやり、意味ある充実した生活(人生)を送れるようにします。人が、生きる上での価値見つけ、その価値に沿った生き方ができるようにします。上記が、そのための2つの柱です。