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2016年07月

  • 第32回心理学講義 『思考・感情・ストレスのコントロール:マインドフルネス』 (2016年07月17日)

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    日々の生活のなかで、思考・感情など心に翻弄されている人が多いと思います。今回の講義では、心のコントロールと、心に巻き込まれないためには、どうしたらいいかということを「マインドフルネス」という心の状態をテーマに行います。

    思考・感情・ストレスのコントロール、心に巻き込まれないために、マインドフルネスという心の状態はたいへん有効です。

    マインドフルネスの状態によって、

    ①思考を変えることで感情を変えることが容易になり、
    ②自分と心(思考・感情・気分)を同一視しないことで、心に巻き込まれなくなります。

    では、マインドフルネスとは、どのようなものなのでしょうか。

    1.マインドフルネス

    (1)マインドフルネスの普及

    ここ数年でマインドフルネスが急速に普及しています。

    ストレス軽減のプログラムに役立てたのが、マインドフルネスの始まりです。マサチューセッツ大学医学部名誉教授のジョン・カバットジン博士が、マインドフルネス・ストレス低減プログラムを開発しました。

    その後、うつ病やパニック障害、不安障害などの心理療法である認知療法に取り入れられ、マインドフルネス認知療法として多くの人がその効果を実感しています。今では、医療・心理療法の分野だけでなく、教育、犯罪者の更生、ビジネスの分野にも広く浸透しています。googleで社員に取り入れられていることは有名です。

    ウィスコンシン大学での研究で、健康ではあるがストレスを感じている従業員を対象として企業での勤務時間に低減法を実施しその効果を検証しました。マインドフルネス瞑想をした人たちは、そうでない人たちよりも、不安や落ち込みといった感情にうまく対処でいるようになったということです。

    (2)マインドフルネスとは?

    では、マインドフルネスとはどのようなものでしょうか。
    マインドフルネスとは、注意深く今の瞬間に気づいている意識状態のことです。
    もう少し詳しく説明すると

    ①心を開いて、今この瞬間に十分に気づいている意識状態です。
    今この瞬間の自分の経験していることを、偏見をもたずに注意深く客観的に観察する。そのためには価値判断を加えずに、今という瞬間の体験と向き合うことが必要です。

    ②受け入れる
    ものごとを今のこの瞬間にあるがままの形で見る。
    私たちの心は通常、ものごとをありのままに受け取るのではなく、それに好き嫌いの色づけをして、自分の気にいるものへの欲求(愛着)と気に入らないものへの排除(嫌悪)、という「とらわれ」を生じさせます。そうではなく、そのままを受け入れ認識するようにします。

    ③常に初めて体験するように、予断をさしはさまないで、その瞬間を体験する。

    マインドフルネスは、東南アジアに伝わるテーラワータ仏教のヴィパッサナー瞑想がもとになっています。ヴィパッサナー瞑想は、瞬間瞬間の自分の心身の状態やものごとを観察し気づく瞑想で、お釈迦さまが説かれた四念処という瞑想に則った瞑想法です。

    四念処とは、身(体)・受(感覚)・心・法(現象)に対する観察です。

    * 身念処:そのときどきの身体の状態に気づきをもって見守る
    * 受念処:そのときどきの感覚に気づきをもって見守る
    * 心念処:そのときどきの心の状態に気づきをもって見守る
    * 法念処:現象・ものごとを気づきをもって見守る
    という観察です。経典には細かく観察法が書かれています。

    仏教の瞑想には、サマタ(シャマタ・止)瞑想、ヴィパッサナー(観)瞑想の2つがあります。それぞれどういう瞑想かというと、

    ●サマタ(止)瞑想:心の働きを止め、静めていく瞑想。
    ひとつの対象に気づきを持って集中する。
    ●ヴィパッサナー(観)瞑想:サマタ瞑想で心が静まったら、現象を客観的に観つめる瞑想
    気づきの対象を広げてゆく。

    マインドフルネスはこの瞑想を基にしたものです。

     (3)マインドフルネスの効果

    ①思考・感情の脱同一化が起こる・・・自分と思考・感情を同一視しない
    客観的に見つめるという意識状態によって、思考は事実とは違うこと。また、思考は流れ去る雲のようなものであるということが実感として認識され、その結果「単に思考に過ぎない」という捉え方になります。そして、そのように過ぎ去る思考と自分を同一視することがなくなり、思考や感情を自分から離して客観的に見ることができるようになり、思考や感情に巻き込まれることがなくなります。それによって、不安や怒りといった感情を少しずつコントロールできるようになります。

    ②思考・感情の脱自動化
    思考や感情は通常、自分の意思とは関係なく、自動的に生じます。それは習慣化・パターン化されたものです。その自動的な無意識的な反応に、マインドフルな意識状態は「気づく」ようになります。気づけば、自動的にならず自分でコントロールができやすくなります。つまり、自分を苦しめる習慣化された否定的な心の働きに気づき、その心に翻弄されることがなくなります。

    ③リラクセーション効果によるストレス軽減
    思考や感情のコントロールによってもストレスは軽減しますが、マインドフルネスによってリラクセーション効果が生じ、それによってつらい気分や感情から解き放たれます。それによって、自分の偏った認知やそれにともなった行動が修正されやすくなります。

    ④その他
    ・よりよい決定を行えるようになる
    ・集中力が増す
    ・創造性が増す
    ・血圧を下げる
    ・免疫力を高める
    ・痛みに捕らわれなくなり、痛みが軽減する
    ・快眠

    などの効果があります。

    では、次にマインドフルネスの意識状態に基づいて、心をコントロールするための方法を具体的に紹介していきます。