教本と講義
ひかりの輪で使用している教本やテキスト、それを解説した上祐代表の講話などをご紹介しています。

2016年06月

  • 第31回心理学講義 『フロー理論』 (2016年06月21日)

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      フロー理論は、1970年代にミハイ・チクセントミハイという心理学者によって提唱されました。フロー理論は、ポジティブ心理学の中心的部分を占める理論の1つです。
    ひかりの輪の心理学講義では、昨年の夏期セミナーにおいて、ポジティブ心理学のもう一つの主要な理論である「拡張-形成理論」について紹介しました。

    チクセントミハイは、ハンガリー出身のアメリカの心理学者。10代のころ、ユングの空飛ぶ円盤についての講演を聴いたのが心理学との出会いで、たいへん興味深かったということです。


    1.フローとは

    スポーツや音楽演奏、仕事や遊びなど、あらゆることで、それを行うときに、極度に集中した状態で、時間の感覚がなく、自我の感覚もなく、自分がやっていることが流れるように自然にうまく行き、世界と一体化しているように感じる体験を「フロー体験」と呼びました。スポーツでは、「ゾーン状態」という言い方が一般的なようです。
    フロー状態のときには、高揚感に包まれ、自分の能力を最大限に発揮している状態であるということです。 また、この状態は、ヨガや禅、タオイズム(道教)における状態と共通点があることも指摘されています。

    プロのバスケット選手が「ゾーン状態にいる」ときのことを語っていますので紹介します。

    「時間の経過が分からなくなって、どのクォーターなのか分からなくなる。観客の声援が聞こえなくなる。何ポイント得点しているのか分からなくなる。思考しなくなる。ただプレイしているだけの状態だ。ムカつくほどすべてが本能的だ。そんな感覚がなくなり始めるとき、そのときがひどい。俺は自分に独り言をいうーおい、お前はもっと攻撃的でなきゃだめだろう。そのときが、それが去ってしまったということがわかるときなんだ。もう本能的じゃなくなっているんだ。」
    (クリストファー・ピーターソン著『ポジティブ心理学入門』春秋社より)

    「何かをやっていて、気がついてみると、『もうこんなに時間が立っていたの!』」
    「バッターが『ボールが止まって見える』」
    などというものもフロー体験です。

    ここで、フロー状態がどのようなものであるか、特徴をまとめてみます。

    (1)行っていることに没頭している。
    (2)時間感覚がなくなる。
    (3)自我の感覚がなくなる。
    (4)自分の能力を最大限に発揮できている。
    (5)世界と一体化しているような感覚。


    2.フロー体験の発見

    次に、チクセントミハイが「フロー」と名付けたこの状態をどのようにして発見したかについて簡単に述べます。

    チクセントミハイは、画家が絵を描いているときに、うまくいっているときは、空腹や疲れや不快感は忘れ去ったように絵を描くことに没頭していて、描き終わると完成した絵に執着せず、また、報酬のために描いていたのではなく、ただ、描くことに意味を見いだしていることに驚きました。
    その後、彼の学生たちとともに、スポーツ、音楽、絵画、登山、チェスなどをその活動そのもののために行っている人たちについて調査しはじめました。その結果から、フロー現象が発見されました。スポーツ、音楽、絵画、登山、チェスなど形式が違うものを行っているときの状況の体験報告の内容がよく似ていたため、それがどういうことなのか追求しました。

    それが、「フロー」と呼ばれるようになった体験でした。その状況を多くの人がよどみなく流れる水にたとえて表現するので、流れ=フローと名付けました。

    チクセントミハイが「フロー」について発表したところ、インド、中国、日本の心理学者、哲学者から彼のところに、手紙が届いたということです。それは、バガバット・ギーター(ヒンドゥー教の聖典)を呼んだことがあるか、老子の『道徳経』を読んだことがあるか、あるいは、禅の奥義について読んだことがあるかというもので、それらには、フロー現象が書かれているということでした。