教本と講義
ひかりの輪で使用している教本やテキスト、それを解説した上祐代表の講話などをご紹介しています。

2016年02月

  • 第28回心理学講義『愛着理論②』 (2016年02月27日)

    第28回心理学講義 『愛着理論②』

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    2.愛着形成に必要なもの

    (1)アカゲザルの実験からわかること
    前回の講義で、アカゲザルの実験をご紹介したが、それに引き続き行われた実験についてみてみる。

    前回ご紹介したのは、以下のような実験である。

    アカゲザルの実験とは、代理母として、哺乳瓶をつけた針金製の母ザルと、哺乳瓶をつけてない柔らかい布製の母ザルを作り、子ザルの行動を研究したものである。

    子ザルは、空腹を満たせる針金製の母ザルよりも空腹は満たせないが、柔らかい肌触りの母ザルと過ごす時間が圧倒的に多く、不安や恐怖を感じる場面では、柔らかい感触の母ザルにしがみつくことが確認された。このことで、心地よい身体接触(スキンシップ)が重要な意味を持つことがわかる。

    この実験の前に実験室で、子ザルたちを1匹ずつ区分けして、栄養や感染症に気をつけて育てていた。そうして育てられていた子ザルたちの様子はおかしかった。生気がなく、陰気で好奇心にも欠け、ぼんやりとして、体を揺すり続けたりした。また、大人のサルと一緒にされることに拒絶反応を起こした。

    このことから、前回紹介した実験が行われ、心地よい身体接触(スキンシップ)が愛着形成に重要な意味を持つことがわかったのであるが、その後、愛着形成に必要なものがそれだけでないこともわかった。


    (2)決定的に必要な要素「応答」

    布の柔らかい母ザルに育てられた子ザルにも異常がみられたのである。外界に対して無関心で、非社交的で他に対する不安が強かった。

    では、何が欠けていたのだろうか。それは、活発な応答性だった。
    泣けばすぐにそれに応え、話しかけたり、見つめ直したりなど、赤ちゃんの反応に対して丁寧に応答してやることである。布の母ザルでは、柔らかな心地よい感触はあっても応答はしてくれない。

    そこで、布の母ザルを天井からぶら下げて揺れて動くようにした。子ザルが抱きつけば動くようにしたのである。それだけのことで、非社交的な無関心さや自傷行為などの子ザルの異常な行動はなくなり、活発さ、好奇心が出てきた。

    さらに、子ザルを雌犬と一緒に飼ったところ、子ザルたちの生育は、吊されて動く布の母ザルと育つよりも良かった。特に社会性の発達はたいへんよかったということがわかった。犬は本当の母ザルほど世話ができなくても、吊されて動く母ザルに比べこれだけ発達に効果があるのである。犬も子ザルが泣けば舐めたりして、動く布の母ザルよりも応答性は高くなることがその効果なのだろう。また、スキンシップのときに生きものの体温・温もりを感じることができるという点も重要なのだろうと思われる。

    人間でも活発な応答が必要なことは、実証されている。前回の講義で紹介した、気むずかしいという素質を持つ赤ちゃんによる実験などがそうある。

    そして、このしっかりとした応答が、自分を見守っていてくれるという安心感を生み(=基本的信頼感および基本的安心感の形成)、愛着の対象を「安全基地」としてその後の成長が促される。


    3.愛着に問題を抱える人の特徴

    (1)自己否定的 卑屈、
    親から愛されない(しっかりした応答や世話を受けなかった)
    → 自分には価値がないと感じてしまう。

    (2)「よい子」を演じる
    親から愛されない → どうしたら愛されるか → 親の気に入る「よい子」になる
    認められるために頑張りすぎる。自分の本来の感情を抑えて気に入られようとする。

    (3)完璧を求める(「全か無か」、こだわりが強い)
    完璧であることで親に認められるので。
    完璧でないと自分の価値を感じられない。

    (4)安心感がない
    しっかりと応答をしてもらえなかったことで、見守ってもらっているという安心感が得られず「基本的安心  感」が形成されなかったことによる。

    (5)傷つきやすく、ものごとを否定的に受け取る
    愛されないことで自己否定的になり、こんな私に対して人が好意を持って接してくれるわけがないとい   う思いが、人の自分に対する反応を否定的なものと捉え、傷つく。

     

  • 2014年夏期セミナー心理学講義 「自己愛について」 (2016年02月09日)

    2014年夏期セミナー心理学講義 「自己愛について」

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    「自己愛について」

    現代人の精神構造を解明するうえで重要なものて自己愛というものがある。
    自己愛という概念は、精神分析の創始者であるフロイトが本格的に研究し唱えた。その後、フロイト派の人々が研究発展させてきた。

    自己愛=ナルシシズムというのは、水に映る自分の姿に恋をしたギリシャ神話のナルシスにならって命名されたもの。

    ナルシスの神話でわかるように、自己愛とは自分に対するとらわれ、自分の関心が自分に向いている状態をいう。
    精神分析学的にいうと、リビドー(さまざまな欲求のもととなるエネルギー)が自分に向かっている状態である。

    自分に向かう関心、エネルギーが強くなると周囲(他)へ向かう関心、エネルギーは弱まる=自己中心的になる。

    自己愛は誰にでもあるもので、外出前に鏡を見て髪型を整えたり、女性なら化粧するというのも自己愛である。
    自己愛の強さは、自分の自己像(自己イメージ)が自分の思い通りであるかどうかにとらわれる強さであり、鏡を見て髪型、化粧に強くこだわるのは自己愛が比較的強いといえる。

    適度な自己愛であれば問題は少ないが、あまりにも自分に意識関心が向かい、自己愛が強過ぎるとさまざまな問題が生じることになる。


    (1)自己愛は発達過程において必要

    乳幼児期に自己愛を満たすことができれば、それは適正な自尊心(自己愛)となり、歪んだ肥大した自己愛にはならない。

    自己愛は発達の過程において生じる自然なものである。
    通常の親子関係においては、一人では生きて生きようのない子どもに対して、親がさまざまな面において愛情をもって奉仕する中で、自然と生じてくる意識状態であり、幼い子どもにとっては、健全な一つの発達段階である。
    そして、それが適切な時期に適度に満たされつつ、子どもの自立の過程において、適切な時期に適度に満たされなくなっていき、子ども側から見れば、ほどよく断念させられることによって、より、「現実的な」自尊心や自信に姿を変えていく。

    しかし、このプロセスがうまくいかない場合がある。

    すなわち、肥大した幼い自己愛が、大人になってまで残ってしまう場合である。現実の「等身大の自分」を自覚できず、自己を「誇大視」し続けて、自分は何でもできる(できる存在でありたい)といった「万能感」を持ち続ける。これは、社会生活を行う上では、当然のごとく、他人との調和ができず、問題を生じさせやすくなる。甚だしい場合、病的な自己愛として人格障害とされる。


    (2)自己愛人格の特徴


    自己愛が強い人の特徴を挙げてみると、

    1.自己誇大視:自分の能力は人より優れているという思い。

    2.自己特別視:自分は他と違い特別な存在だという思い。

    3.理想的な自分をいつも実現しようとする。
    限りない成功、権力を得ること、才能を発揮すること、より美しくなることなど理想の実現を追い求める。自己愛が肥大化しているので、それを満たすために常に地位であったり、自分を認めてくれる人であったり、物によって価値を感じようと貪欲に求める。

    4.常に周囲からの賞賛、好意、特別扱いを得ようとする。さらにそれを得て当たり前と思っている。

    5.現実の自分がうまくいかないとき、そのことを認めない(否認)する、また、投影によって他の責任にする。

    ①「否認」のメカニズム
    自己愛的イメージ(誇大自己)と現実の自分との一致が自己愛を満たす、ということから考えて、誇大自己とかけ離れている自分の現実を認めることはできず、自分の問題を直視しないで、自分には非がなく問題はないと思いたいという自己愛的欲望によって、他に責任を押し付けることになる。

    自己愛というのは自分への愛着であるが、現実の自分への愛着ではなく自己イメージへの愛着であり、それは自分に都合よく思い描かれた自己イメージ=誇大自己である。

    よく、「本当の自分はもっとできる」「本気出してないだけだ」と言う人、思う人がいるが、この場合の本当の自分とは自己愛的自己イメージ=誇大自己のことである。なかなか現実の自分を受け入れられないので、自己イメージにしがみつこうとする。
    それが、他のせいにし、自分の責任を否認することになる。

    ②「投影」のメカニズム
    そして、他に責任をおしつける手っ取り早い方法として「投影」がある。
    投影は、自分にあることを認めたくない要素、「内なる悪」を外部に追い払い自分から消去することである。
    自己愛が強いほど、自分にマイナス要素があることを認めたくないので投影が起こりやすくなる。

    自己愛が強い人は、自分のマイナス面だけでなく、世界の悲惨なこと(飢餓、紛争などで苦しんでいる人がいること)なども見ようとせず、自分の自己愛を満たすことだけに意識が向いている。

    6.共感の欠如
    自己愛が強いということは、自分にばかり関心が向かっているので他人の気持ちがわからず、人に共感できない。こういう人が他人を大切にするのは、自己愛を満たすためであり、相手のためにやっているのではない。