教本と講義
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ヨーガ行法の心理学

6.調身・調息・調心
(2015年12月17日)

                                          山口雅彦

よく調身・調息・調心といいます。目に見えない、つかめない心にいきなりアプローチすることは、むずかしいことです。それに比べ身体や呼吸をコントロールすることの方が簡単です。ですから、まず身体・呼吸をコントロールし、それを通して心にアプローチしていきす。調身・調息によって調心をはかるというわけです。

 多くの心理療法、各種セラピーは心だけ、もしくは身体だけに作用するものが多いです。もちろん、身体、心の両方に働きかけるものもあります。そのなかで、呼吸法はたいへんすばらしいものです。しかし、いきなり呼吸(調息)から入るより、まずは、身体(調身)から入る方がより自然に無理なく呼吸(調息)にアプローチできます。そこで、ヨーガが注目されることになるのです。


3.<アーサナ>
ヨーガでは、アーサナと呼ばれる身体技法から入ります。次の調気法と並んで、ヨーガ技法のうえで重要な位置を占めるものです。しかも呼吸と合わせながら行う身体技法ですから調身の段階ですでに調息の要素も入ってきています。それだけでなく、この段階で調心のためのアプローチもすでに始まっています。

私たちは通常、身体に対して無意識になっています。日常生活で動かす身体の動きは、身体の可動範囲のなかのごく限られた範囲でしか行われていません。

アーサナは、様々なポーズにより日常での動きでは充分に動かしきれていない身体の部分にアプローチしていきます。そして、ひとつのポーズを一定時間保つことによって、普段無意識になっている身体の部分が意識化されます(身体部分での無意識の意識化)。

つまり、身体を通して無意識領域にアプローチしているわけです。そして、その無意識の領域には当然、様々な感情や思考及び思考パターンなど心の傾向が存在しています。ですから、身体のある部分(普通、痛みのあるところや突っ張る感じのするところ)に集中することによって、心の要素にも気づいていくことになるわけです。

この場合、いきなり気づきが起こるのではなく、通常は、身体感覚への集中から、「身体心」とでも言ったらいいような身体と心の中間の領域での「あるフィーリング」を感じだします(身体的感情と言ってもいいようなもの。身体からのメッセージが伝わるという感じ。心理療法のフォーカシングでは「フェルトセンス」)。

それに集中していると心の要素の気づきへと発展していきます。自分の内側に何があるか気づくことは、心のコントロールには欠かせないことです。また、気づきだけで心の問題が解決する場合もあります。

 そしてこの無意識の意識化は潜在の残存印象によって生じる自動化された反応にたいして有効です。
自動化を止めるためには無意識になっている反応を意識化することが必要です。

無意識化した思考や行為を意識化していくことによって、思考や感情が生じてくることに気づくようになります。気づいたものはコントロールしやすくなります。コントロールしやすくなると、より戒を守りやすくなります。

たとえ反応が生じたとしても、それを自覚していれば翻弄されません。つまり、瞬間的に次に生じる識別作用がくい止められます。(このあたりは仏教の十二縁起で言われるサンスカーラ(行・残存の潜在形成力)の次にくる識(識別作用)のこと)

識別作用によって善い悪いを判断しそこから、苦しみの動きが始まります。ですから、識別作用を止めることによって苦しみは生じなくなります。

それには、瞬間瞬間に気づいた意識状態が大切になります。それは、瞬間瞬間に目覚めた見つめる意識です。こうした身体感覚を認識するという作業は、「目覚めた、ただ見つめる意識」を強めます。純粋意識というものです。

このように、アーサナという身体技法によって、すでに調心の準備が始まっているというわけです。

もちろん、アーサナは身体を整え健康という素晴らしい恵みを与えてくれます。

 坐位を快適に、しかも不動にするための身体の構えを生みだしていきます。生命維持の根本である自律神経の働きを強化し、内臓器官を調え、カラダを柔軟にし、骨格の歪みを直します。ホルモン分泌の正常化、免疫機能を高める、肩こりをはじめとするこりの解消等です。

さらに実習によって得られるカラダの柔軟さと強靱さは、その人の性格を穏やかで明朗快活にしていくなどのすぱらしい恩恵をたらしてくれます。心身の相関関係です。

また体位法(アーサナ)を行ずることによって、正しい呼吸のあり方を学び、そのなかで、次に続くプラーナーヤーマ(調気法)への準備が必然的に生み出されていくのです。また、その修練のなかで、精神の集中力が養われ、瞑想を行うための心理的な基礎が養われていきます。


4.<プラーナーヤーマ>
ヨーガは、続いてプラーナーヤーマ(調気法)という呼吸をコントロールする技法(調息)に入ります(ヨーガは、非常に科学的に、アプローチする順番が決められている)。

プラーナーヤーマによってアーサナでアプローチした無意識領域にさらに深くアプローチしていきます。

心の状態と呼吸の関係は、身体と心の関係より、より直接的です。穏やかな心のときは、呼吸もゆったりと深い穏やかな呼吸になっています。心がイライラしたり、落ち着かないときは、呼吸も浅く早くなっています。逆に言えば、呼吸をゆったりと深い呼吸にすれば、心が穏やかになるということです。調息によって調心をはかるということです。

呼吸法によって、さらに意識の深層にアプローチしていきます。深く長い呼吸を続けることによって、出て行く息と入ってくる息に集中し、心はさらに意識の深層に収斂していきます。心は深く穏やかになり、思考は緩慢になって次の瞑想へとつながっていきます。

 

 通常、日本ではこのアーサナ、プラーナーヤーマをヨーガと思っている方が多いです。実際この部分だけのヨーガを教えているところがほとんどです。そしてこの部分の心理学的アプローチをしているところもほとんどありません。

「ヨーガ・スートラ」をあらわしたパタンジャリによると、煩悩は純然たる心理的作用でもなく、純然たる生理的作用でもありません。煩悩とは精神生理的な作用であって、煩悩と取り組む最良の方法は、少なくとも煩悩がある程度コントロールされるまで、心身両面の訓練を行なうことが必要なのです。

今回の解説はここまでとします。

瞑想の心理学については、しばらくして掲載していきたいと思います。

 

 

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