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     このコーナーでは、ひかりの輪が説く心理学講義の特別教本をご紹介するとともに、心理学に関する記事を掲載していきます。

心理学講義の教本

  • 2016年夏期セミナー心理学講義『選択理論 ~リアリティセラピー~』

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    1.選択理論とは

      選択理論は、精神科医ウイリアム・グラッサー博士によって提唱されたカウンセリング手法であるリアリティセラピー(現実療法)の基本理論です。

    (中略)

      選択理論の考えは、「他人を変えることはできない。変えることができるのは自分だけである」をモットーに、人が生きていくうえで、避けることのできない人との関係を良好なものにして、幸福に生きていく方法を説く心理学理論です。選択理論を使いカウンセリングを行っていくのが、リアリティセラピーです。

      「自分を変える」ということは、自己をコントロールするということになります。「他人を変えることができない」ということは、他人をコントロールすることはできない、ということになります。

      人はよくこのようなことを言います。
    「私が今不幸なのは、あの人が○○したからだ」
     自分には一切の責任がなく、悪いのはすべて他人のせいということです。
     しかし、選択理論では、このように言います。「自分の行動のすべては、自分で選んでいる。それは、惨めな感情や神経症などの症状であっても」。つまり、今自分が不幸なのも、人のせいではなく、自分が選んだ行動によるものであるということです。ここで「選ぶ」という言葉がでてきましたが、選択理論という名称はここからきています。自分の行動は自分で選択している、ということです。
     自分で選択可能な自分の行動や思考を適切に選択することで、人間関係その他の問題を改善する理論です。

     それでは、この後、選択理論の主要な概念について説明していきます。そのなかで、私たちが自分の行動を選択しているということが理解できていくのではないかと思います。その前に、選択理論と反対の他人をコントロールするという普段私たちがよく行っていることがマイナスであることについて説明します。


    2.外的コントロール心理学

     選択理論を理解しやすくするために、選択理論とは逆の他人を変える、他人をコントロールすることについて説明します。選択理論では、他人をコントロールして変えようとすることを「外的コントロール心理学」と言います。

     私たちは往々にして、人を自分の思うように動かしたい、支配したいと思います。そして、そのために、罰を与えたり、褒美を与えたりして相手を自分の思うようにさせます。

     例えば、子どもが勉強しないと、おやつを与えないとか、テストでいい点取ったら○○あげるなどがそうです。このような対応では、子どもは一時的に勉強するかもしれませんが、このような対応が頻繁になると、効果も薄くなり、また、親子関係がかんばしくないものにもなっていきます。

     外的コントロール心理学には、「致命的な7つの習慣(行き過ぎやすい習慣)」というものがあります。

       ※ここで「致命的な」という表現がされていますが、それはグラッサー博士の臨床経験から、この7つの習慣が頻繁に使われたことで問題を生じさせたクライアントを多く診ていることから、行き過ぎやすい習慣という意味で「致命的な」という強い・極端な表現を使っているものと理解していただいたらと思います。

    ①批判する
    ②責める
    ③文句を言う
    ④ガミガミ言う
    ⑤脅す
    ⑥罰する
    ⑦ほうびで釣る

     この習慣が習慣的に実践されることで、基本的欲求が充足されず、問題が発生します。この7つ以外でも、相手の罪悪感に訴える、無視するなどのコントロール法もあります。

     外的コントロールに害がないならばいいのですが、そうではなく外的コントロールによって他人を思うように動かそうとすることで、人間関係が損なわれることになります。なぜなら、人に支配されることを快く思う人はいません。脅しや罰によって人を思うように動かしても、そのときだけで、その人との信頼に基づいた温かい人間関係を結ぶことはできません。

     人間は人との関係に支えられて生きています。良好な人間関係が結ぶことができない人は、孤独を感じ、良好な人間関係から得られる喜びを感じることができないので、他のことでその欲求を満たそうとします。たとえそれが、一見してマイナスなことであっても手っ取り早く快感を得られるものに手を出してしまいす。お酒、麻薬、暴力、ギャンブルなどがそうです。ですから、アルコール依存症の人など、良好な人間関係が持てるように支援していくことで、お酒を飲む必要がなくなっていきます。
     日常において、お互いがお互いに、相手をコントロールしようとするわけですから、良い関係を築くことは難しくなります。
     他人をコントロールし、変えるのではなく、自分をコントロールして変えることで良い人間関係を目指す選択理論が有効であることがわかると思います。

    (中略)

     ここに書かれている対立構図ではではない関係はどのような態度、習慣から生まれてくるのでしょうか。

     選択理論が説く「身につけたい7つの習慣」(不足しがちな習慣)
    ①耳を傾ける
    ②励ます
    ③尊敬する、敬意をはらう
    ④受け入れる
    ⑤違いを交渉する。調整する。話し合う。
    ⑥信頼する
    ⑦支援する

     外的コントロールの7つの習慣ではなく、上記の7つの習慣を実践することで人間関係は良好で温かいものになっていくことはおわかりになるかと思います。

     

  • 第34回心理学講義『ロゴセラピー ~生きる意味の心理学~』

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     1.ロゴセラピーとは

      ロゴセラピーの「ロゴ」とはギリシャ語の「意味」という意味であり、ロゴセラピーとは、生きる意味を見失い、絶望している人に生きる意味を見出す援助をする心理療法で、「意味による治療」と訳すことができる。

      創始者は、オーストリアの精神医学者、心理学者のヴィクトール・E・フランクル。ユダヤ人であったフランクルは、ナチスの強制収容所生活を3年送っている。その体験をもとに書かれた『夜と霧』は日本語を含め17ヶ国語に訳されている。
      フランクルは、生き延びたが、父母、妻は、強制収容所で死亡している。

      ロゴセラピーは、フロイトの精神分析、アドラーの個人心理学と並び、心理療法のウィーン学派三大潮流とも言われる。また、心理学全体の四大潮流(第1の潮流:精神分析、第2の潮流:行動主義心理学、第3の潮流:人間性心理学、第4の潮流:トランス・パーソナル心理学:巻末資料1参照)でいうと、第4の潮流:トランス・パーソナル心理学に入る。(注:トランスパーソナルとは、「個を超える」という意味である)

      ロゴセラピーでは、意味の喪失が、精神的病の原因となることがあり、意味を見出すことで、改善されていくという。そして、人はどんなに苦しい状況でも、そこに意味を見出せれば、耐え、生きていける。このことは、まさにフランクルの強制収容所での体験を現している。
      しかし、ロゴセラピーは収容所体験を基にしたものではなく、すでにその前に、理論はほぼ完成されており、収容所体験が理論の正当性を検証することとなったという。


    2.意味の喪失は現代社会の病理

      アメリカの大学で自殺未遂をした学生の85%が「人生が無意味に思えた」ことを自殺の理由に挙げている。このうち93%の学生は、社会的活動も活発で、成績もよく、家族関係も良好であったという。
      自殺は、アメリカの学生の死因の第2位である。そのことを考慮すると、上記のことは、人生の意味を感じることはいかに重要なことかわかる。
    (注:1970年代後半のデータを元にフランクルが述べている。2012年のデータでは、自殺はアメリカの若者の死因の第3位である。)

      経済的・社会的安定が幸福という思い込みは打ち消される。豊かになったからといって幸福になったわけではない。生きる意味の喪失=虚無感・むなしさという問題(実存的問題)が起こってきている。

      人に、どう生きていくのがいいのかを教えてくれた伝統や伝統的価値感が崩壊していくことで、現代では、方向喪失に陥り、自分が何をしたいか、どう生きたらいいのか、生きる意味を見出せなくなっている人が多いという。

      一方、いわゆる不幸と言われる状況のなかで幸福を感じている人もいる。フランクルは、受刑者からの手紙や、末期ガンの父親を看病する人からの手紙に、そうした人を見た。


    3.ロゴセラピー3つの基本

      ロゴセラピーでは、以下の3つを基本前提とする。これらは仮説とも言えるが、フランクル自身が収容所やクライアントなどとの関わりから得た実証とも言える。

    (1)意志の自由
      人間は様々な条件の制約を受け自由ではない。しかし、人間はその制約の中で自分の意志で態度を決めることができる自由を持っている。
      極限状況で、それに屈服するか、立ち向かうか、それはその人が決断・選択できる。
      強制収容所での体験がそれを裏づけている。飢えや寒さ、疲労、不衛生など極限の状況のなかで、エゴに乗っ取られ野獣性を現す人もいれば、思いやりなどの高潔な態度、聖性を現す人もいた。

      ここで、このような反論があるかもしれない。決断の自由というが、ある決断をした場合、その決断自体が決められていたことであり、その人の自由ではないのではないか、という反論である。これに対してフランクルは、「しかし、この論法では無限後退に陥り、集結に至らない」として退けている。

    (2)意味への意志
      人間は生きる意味を探し求めている。それは、高い目標や意欲である。
    意味への意志は、多くの研究者のテストや統計学的手法による研究によって、経験科学的に立証されてきた。
      アメリカの国立精神衛生研究所の調査研究(48大学、7948人対象)では、78%の学生が「人生に意味を見出すこと」を第1の目標にしている。

      ここで、マズローの欲求の階層説(巻末資料2参照)を考えてみる。マズローの階層説に基づけば、強制収容所などで飢えている状況では、第1の欲求(低い欲求)である生理的欲求が満たされていないなら、上位の欲求である意味への意志が生じることはないことになる。
      しかし、収容所においては、過酷な状況のなかでも生きる意味を求める人たちがいる。自分を価値ある意味ある存在として感じることで、極限状況を耐えた人たちがいるのだ。

      このようなことからも、意味への意志を人間は持っていると言えるのではないか。そして、それは、マズローの言う階層的な欲求を超えたものとして「意味への欲求」があると言えるかもしれない。

    (3)人生の意味
      どんな人にも人生の意味はあり、手に入れることはできる。
    このことは、多くの研究者によって実証されている。各研究によれば、人種・性・IQ・受けた教育・環境・宗教などの違いに関係なく、どんな人でも意味を手に入れることはできるという。

      意味を見出すということは、「現実の中に埋もれている可能性を知覚する」ことだとフランクルは言う。「自分たちの直面している状況に関して、(中略)、自分のなしうるものは何かを発見する、ということである。」(フランクル著『<生きる意味>を求めて 』春秋社より)と述べ、原理的には、どのような悪い状況においても、意味を見出すことはできるという。

      また、苦しみが自分をよりよい自分に変えるなら、苦しみにも意味があると、収容所経験者は語っていると、フランクルは上記の著書で述べている。

      さらに、「自分自身を変えることは、しばしば、自分自身を乗り越えることを意味する。自分自身を越えて成長する事を意味する」(フランクル著『<生きる意味>を求めて 』春秋社より)とも述べている。そして、それは苦しい状況のときにこそ生じる。

      また、与えられた運命(多くの場合、苦しい運命)を引き受けることは、人生の意味を成就する機会であるとも捉えている。

     

     

  • 第32回心理学講義 『思考・感情・ストレスのコントロール:マインドフルネス』

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    日々の生活のなかで、思考・感情など心に翻弄されている人が多いと思います。今回の講義では、心のコントロールと、心に巻き込まれないためには、どうしたらいいかということを「マインドフルネス」という心の状態をテーマに行います。

    思考・感情・ストレスのコントロール、心に巻き込まれないために、マインドフルネスという心の状態はたいへん有効です。

    マインドフルネスの状態によって、

    ①思考を変えることで感情を変えることが容易になり、
    ②自分と心(思考・感情・気分)を同一視しないことで、心に巻き込まれなくなります。

    では、マインドフルネスとは、どのようなものなのでしょうか。

    1.マインドフルネス

    (1)マインドフルネスの普及

    ここ数年でマインドフルネスが急速に普及しています。

    ストレス軽減のプログラムに役立てたのが、マインドフルネスの始まりです。マサチューセッツ大学医学部名誉教授のジョン・カバットジン博士が、マインドフルネス・ストレス低減プログラムを開発しました。

    その後、うつ病やパニック障害、不安障害などの心理療法である認知療法に取り入れられ、マインドフルネス認知療法として多くの人がその効果を実感しています。今では、医療・心理療法の分野だけでなく、教育、犯罪者の更生、ビジネスの分野にも広く浸透しています。googleで社員に取り入れられていることは有名です。

    ウィスコンシン大学での研究で、健康ではあるがストレスを感じている従業員を対象として企業での勤務時間に低減法を実施しその効果を検証しました。マインドフルネス瞑想をした人たちは、そうでない人たちよりも、不安や落ち込みといった感情にうまく対処でいるようになったということです。

    (2)マインドフルネスとは?

    では、マインドフルネスとはどのようなものでしょうか。
    マインドフルネスとは、注意深く今の瞬間に気づいている意識状態のことです。
    もう少し詳しく説明すると

    ①心を開いて、今この瞬間に十分に気づいている意識状態です。
    今この瞬間の自分の経験していることを、偏見をもたずに注意深く客観的に観察する。そのためには価値判断を加えずに、今という瞬間の体験と向き合うことが必要です。

    ②受け入れる
    ものごとを今のこの瞬間にあるがままの形で見る。
    私たちの心は通常、ものごとをありのままに受け取るのではなく、それに好き嫌いの色づけをして、自分の気にいるものへの欲求(愛着)と気に入らないものへの排除(嫌悪)、という「とらわれ」を生じさせます。そうではなく、そのままを受け入れ認識するようにします。

    ③常に初めて体験するように、予断をさしはさまないで、その瞬間を体験する。

    マインドフルネスは、東南アジアに伝わるテーラワータ仏教のヴィパッサナー瞑想がもとになっています。ヴィパッサナー瞑想は、瞬間瞬間の自分の心身の状態やものごとを観察し気づく瞑想で、お釈迦さまが説かれた四念処という瞑想に則った瞑想法です。

    四念処とは、身(体)・受(感覚)・心・法(現象)に対する観察です。

    * 身念処:そのときどきの身体の状態に気づきをもって見守る
    * 受念処:そのときどきの感覚に気づきをもって見守る
    * 心念処:そのときどきの心の状態に気づきをもって見守る
    * 法念処:現象・ものごとを気づきをもって見守る
    という観察です。経典には細かく観察法が書かれています。

    仏教の瞑想には、サマタ(シャマタ・止)瞑想、ヴィパッサナー(観)瞑想の2つがあります。それぞれどういう瞑想かというと、

    ●サマタ(止)瞑想:心の働きを止め、静めていく瞑想。
    ひとつの対象に気づきを持って集中する。
    ●ヴィパッサナー(観)瞑想:サマタ瞑想で心が静まったら、現象を客観的に観つめる瞑想
    気づきの対象を広げてゆく。

    マインドフルネスはこの瞑想を基にしたものです。

     (3)マインドフルネスの効果

    ①思考・感情の脱同一化が起こる・・・自分と思考・感情を同一視しない
    客観的に見つめるという意識状態によって、思考は事実とは違うこと。また、思考は流れ去る雲のようなものであるということが実感として認識され、その結果「単に思考に過ぎない」という捉え方になります。そして、そのように過ぎ去る思考と自分を同一視することがなくなり、思考や感情を自分から離して客観的に見ることができるようになり、思考や感情に巻き込まれることがなくなります。それによって、不安や怒りといった感情を少しずつコントロールできるようになります。

    ②思考・感情の脱自動化
    思考や感情は通常、自分の意思とは関係なく、自動的に生じます。それは習慣化・パターン化されたものです。その自動的な無意識的な反応に、マインドフルな意識状態は「気づく」ようになります。気づけば、自動的にならず自分でコントロールができやすくなります。つまり、自分を苦しめる習慣化された否定的な心の働きに気づき、その心に翻弄されることがなくなります。

    ③リラクセーション効果によるストレス軽減
    思考や感情のコントロールによってもストレスは軽減しますが、マインドフルネスによってリラクセーション効果が生じ、それによってつらい気分や感情から解き放たれます。それによって、自分の偏った認知やそれにともなった行動が修正されやすくなります。

    ④その他
    ・よりよい決定を行えるようになる
    ・集中力が増す
    ・創造性が増す
    ・血圧を下げる
    ・免疫力を高める
    ・痛みに捕らわれなくなり、痛みが軽減する
    ・快眠

    などの効果があります。

    では、次にマインドフルネスの意識状態に基づいて、心をコントロールするための方法を具体的に紹介していきます。

     

     

  • 第31回心理学講義 『フロー理論』

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      フロー理論は、1970年代にミハイ・チクセントミハイという心理学者によって提唱されました。フロー理論は、ポジティブ心理学の中心的部分を占める理論の1つです。
    ひかりの輪の心理学講義では、昨年の夏期セミナーにおいて、ポジティブ心理学のもう一つの主要な理論である「拡張-形成理論」について紹介しました。

    チクセントミハイは、ハンガリー出身のアメリカの心理学者。10代のころ、ユングの空飛ぶ円盤についての講演を聴いたのが心理学との出会いで、たいへん興味深かったということです。


    1.フローとは

    スポーツや音楽演奏、仕事や遊びなど、あらゆることで、それを行うときに、極度に集中した状態で、時間の感覚がなく、自我の感覚もなく、自分がやっていることが流れるように自然にうまく行き、世界と一体化しているように感じる体験を「フロー体験」と呼びました。スポーツでは、「ゾーン状態」という言い方が一般的なようです。
    フロー状態のときには、高揚感に包まれ、自分の能力を最大限に発揮している状態であるということです。 また、この状態は、ヨガや禅、タオイズム(道教)における状態と共通点があることも指摘されています。

    プロのバスケット選手が「ゾーン状態にいる」ときのことを語っていますので紹介します。

    「時間の経過が分からなくなって、どのクォーターなのか分からなくなる。観客の声援が聞こえなくなる。何ポイント得点しているのか分からなくなる。思考しなくなる。ただプレイしているだけの状態だ。ムカつくほどすべてが本能的だ。そんな感覚がなくなり始めるとき、そのときがひどい。俺は自分に独り言をいうーおい、お前はもっと攻撃的でなきゃだめだろう。そのときが、それが去ってしまったということがわかるときなんだ。もう本能的じゃなくなっているんだ。」
    (クリストファー・ピーターソン著『ポジティブ心理学入門』春秋社より)

    「何かをやっていて、気がついてみると、『もうこんなに時間が立っていたの!』」
    「バッターが『ボールが止まって見える』」
    などというものもフロー体験です。

    ここで、フロー状態がどのようなものであるか、特徴をまとめてみます。

    (1)行っていることに没頭している。
    (2)時間感覚がなくなる。
    (3)自我の感覚がなくなる。
    (4)自分の能力を最大限に発揮できている。
    (5)世界と一体化しているような感覚。


    2.フロー体験の発見

    次に、チクセントミハイが「フロー」と名付けたこの状態をどのようにして発見したかについて簡単に述べます。

    チクセントミハイは、画家が絵を描いているときに、うまくいっているときは、空腹や疲れや不快感は忘れ去ったように絵を描くことに没頭していて、描き終わると完成した絵に執着せず、また、報酬のために描いていたのではなく、ただ、描くことに意味を見いだしていることに驚きました。
    その後、彼の学生たちとともに、スポーツ、音楽、絵画、登山、チェスなどをその活動そのもののために行っている人たちについて調査しはじめました。その結果から、フロー現象が発見されました。スポーツ、音楽、絵画、登山、チェスなど形式が違うものを行っているときの状況の体験報告の内容がよく似ていたため、それがどういうことなのか追求しました。

    それが、「フロー」と呼ばれるようになった体験でした。その状況を多くの人がよどみなく流れる水にたとえて表現するので、流れ=フローと名付けました。

    チクセントミハイが「フロー」について発表したところ、インド、中国、日本の心理学者、哲学者から彼のところに、手紙が届いたということです。それは、バガバット・ギーター(ヒンドゥー教の聖典)を呼んだことがあるか、老子の『道徳経』を読んだことがあるか、あるいは、禅の奥義について読んだことがあるかというもので、それらには、フロー現象が書かれているということでした。

     

     

  • 2016年GWセミナー心理学講義教本『自己存在価値を求めて』

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     1.自己存在価値を求める

      自己存在価値とは、「自分が存在する価値」です。人が生きていくうえでは、「自分は存在する価値がある」と感じることは不可欠です。ですから、自分には価値があるという感覚=自己価値感を欲しています。

    「自分には価値がない」と感じて、生きていくことはとてもつらいことです。自分には「価値がない」というのは、自分には「生きる価値がない」、自分は「生きるに値しない」ということです。ですから、人が生きるうえでは、「自分が価値ある存在である」と感じることは必要なことであり、それを求めて人は生きていると言っても過言ではありません。


    2.2つの自己価値感

      この自己価値感には、表面的な状況的なものと、根底の基本的なベースのものがあります。

      表面的な状況的な自己価値感とは、「いい学校にはいったら」「表彰されたら」「スタイルがよくなったら」など条件が整って感じるものです。

      一方、基本的な自己価値感は、欠点や未熟な点があっても、それでも自分に価値があると感じることができる、ありのままの自分を認めることができる状態のことです。それは、存在自体に価値を感じているからです。「・・・だから」価値がある、価値がないではなく、無条件に自分には価値があるという感覚です。

    基本的な自己価値感が乏しい人というのは、条件を満たすことで自己価値感を求めます。基本的な自己価値感が乏しいので、足りない分を穴埋めしなければ生きていけません。
    例えば、他者の評価を過剰に求めることなどがそうです。評価されることで自分の価値を感じることができます。評価されないと自分は価値がない存在だと感じてしまいます。
    このことは、自己価値感が低い人は、承認欲求が強いということです。他者に承認されることで、自分の価値を感じられるからです。ですから、自己価値が低ければ低いほど、承認欲求は脅迫的にまで強くなります。

    基本的な自己価値感がしっかりしている人は、表層的な外的な評価や賞賛を過剰に求めることで、自己価値を感じようとする必要がありません。それらがなくても、自己価値を感じて充足しているからです。しかし、基本的な自己価値感が乏しい人は、自分の価値感を感じるため、それを求めなければいられません。そして、それ求める人生を送ります。

     

  • 2015年夏期セミナー心理学講義教本『ポジティブ心理学』

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    1.ポジティブ心理学

    ポジティブ心理学は、1998年、アメリカ心理学会会長であったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって創設されました。
    心理学の枠組みとしては最新の心理学です。

    ポジティブ心理学は、「生きる意味と目的を探求する心理学」で、何が人生を生きる価値のあるものにするか、という人生をよい方向に向かわせることについて科学的に研究する心理学、人生を生きる価値のあるものにする事柄を研究の主題として、取り組む心理学です。

    「ポジティブ心理学とは、私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域である、と定義されます。」
    (日本ポジティビティ心理学協会サイトより引用)

    「ポジティブ」という言葉から受けるイメージは、何でも楽観的に捉え、明るく元気という「空元気」、あるいは「現実逃避(軽視)」して明るく振る舞うという軽い浅薄なイメージがありますが、この心理学でいう「ポジティブ」はそういうものではありません。現実に苦難があればそれを直視して乗り越えて行こうという現実的・積極的なもので、にこにこ笑顔の元気さだけを扱うものではありません。この点、誤解されやすいネーミングだと思います。

    ポジティブ心理学の分野のなかで、中心的な理論として「拡張-形成理論」というものがあります。心理学博士のバーバラ・フレドリクソンという人の唱えた学説です。

    この他、ポジティブ心理学の理論として有名なものは「フロー体験」というものがあります。フロー体験とは、「そのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している状態で、そのことがすばらしくうまくいっている状態」をいいます。


    2.「拡張-形成理論」

    今回の心理学講義では、「拡張-形成理論」を紹介します。
    「拡張-形成理論」は、ポジティビティが心の拡張と心の能力・成長を高める(拡張-形成)ということを27万人のデータが証明した理論です。

    この理論を簡単に説明すると、
    ポジティブな感情が増えると、視野が広がり思考の範囲が広がり、さまざまな考え方や行動の可能性を開く、心身を開放し、受容性、創造性を高める、生活を改善する、人を成長させる、といものです。
    この理論は、ポジティブな心の状態=「愛」「喜び」「感謝」「安らぎ」といったポジティブな感情の研究から導き出されました。

     

  • 第30回心理学講義 『森田療法』

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    1.日本で生まれた心理療法

       森田療法は、1919年に森田正馬によって開発された心理療法です。森田療法は、対人恐怖症、強迫神経症、不安神経症(パニック障害、全般性不安障害)などの神経症が主たる治療の対象。また最近では、慢性化するうつ病やガン患者のメンタルケアなど、幅広い分野に有効と言われています。 神経症とまではいかなくても、心配性の人、不安が強い人、完璧主義の人、神経質な人にも効果があります。

       ちょうど同じ頃、やはり神経症を対象とした精神療法がフロイトによって創始された精神分析です。
    精神分析と森田療法の違いは、森田療法では、①無意識ということは言わない、②過去を問わない、という違いがあります。

       森田療法の目指すところを簡単に言いますと、恐怖や不安、心配、緊張などがあってもそれをそのままにして(このことを「あるがまま」と言います)、やるべきことをやる、ということです。

       そのことを順次説明していきます。


    2.神経症とは

       まず、森田療法の治療対象となる神経症とはどういうものかをみていきましょう。

       神経症とは、心理的原因によって生じる心身の機能障害の総称で、器質的な問題によるものではありません。ですから、普通の人が日常体験するような心の働きの延長上にあるものです。

       例えば、外出したとき、玄関の鍵を閉め忘れたのではないか、という不安は普通にも生じることで、そのこと自体、神経症ではありません。そのことが、気になって気になって、何度も家に戻って鍵が閉まっているかどうか、確かめずにはいられないという状態が神経症です。


    3.主な神経症

    (1)恐怖症(社会不安障害)

       人前で話したり、初対面の人と会うときに生じる緊張や不安は誰にでもあることですが、このような緊張や不安が強く、学校、会社に行けず、社会的活動から引きこもってしまう状態です。引きこもらないまでも、人との接触を避けるようになり、生活に支障をきたします。「対人恐怖」「赤面恐怖」「外出恐怖」などがそうです。

       恐怖症は、大きく2つに分けられます。
       一つは、街中の雑踏、電車・バスなどの乗り物などの空間(広場)に対する恐怖症。もう一つ人から変に思われないか、批判されないかなどの対人恐怖症があります。

    (2)強迫神経症

       強迫観念による強迫行為。手を何度も洗わないと気がすまない、電気を消したか何回も確認しないといられないなどです。


    (3)不安神経症(パニック障害、全般性不安障害)

    ①パニック障害
       「このまま死んでしまうのでは」というパニック発作(不安発作)を繰り返します。突然の動悸や呼吸困難、発汗、めまいなどの身体症状とともに、強い不安や恐怖感を伴います。このパニック発作を何度か繰り返すと、また起こるのではないかという不安・恐怖(予期不安)が生じるようになります。そして、過去に発作が起きたような場所や逃げ場がないような場所(乗り物など)、それから、人に見られるのが恥ずかしいので大勢の人のいるところに出かけることを避けるようになります。

    ②全般性不安障害
       「何かの病気になるのではないか」「何か悪いことがおこるのではないか」など、様々な不安が生じ緊張し、震え、筋肉の緊張、発汗、めまい、頭のふらつきなどの身体症状を伴います。夜も眠れなくなり生活に支障をきたします。


    4.神経症は「不安」が基にある

       上記のように、神経症には様々なタイプや症状がありますが、共通しているのが「不安」です。不安と、その不安にとらわれることによって、不安が強まり、様々な症状が固定化したのが神経症です。

       神経症の症状は、普通の人が日常体験するような心の働きの延長上にあるもので、質的な違いはありませんが、その強さや継続時間が際立っています。

       例えば、何時間も手を洗うとか、何度も鍵をかけたか確認する等、日常生活に大きな支障をきたす場合、神経症であると考えられます。

     

     

     

  • 第24回心理学講義『人は皆、多重の人格をもつ』

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     「人は皆、多重の人格をもつ」

    今回は一つの心理学理論を吟味しそこから学んでいくというのではなく、人間というのは「多重の人格を持っている」という理解と人間観を持つことで、自分と他人が全く違った別々の存在であるという認識から、自他の共通性・全く別の違った存在ではないことの理解(ひいてはその実感)、万人を平等に見る、自他に対する寛容と慈悲といったものを培う一助にしていただければと思います。

    そのために、「交流分析」、「影の理論」、「サイコシンセシス」などの心理学理論と「仏教の十界互具」の教えを参考にして話をしたいと思います。


    1.人は誰でも、多重人格

    人は様々な人格を持っています。人格というのは心の要素、性格などと考えてください。

    ・イライラして怒りっぽい自分。
    ・自分が驚いてしまうほどに優しい自分。
    ・引っ込み思案な自分。
    ・すぐに不安になってしまう自分。
    ・嫌なことがあると逃げてしまう自分。
    ・人前が苦手で赤面してしまう自分。
    ・人を助けたいと強く願う自分。
    ・批判的な自分。

    などです。まだまだたくさんあるでしょう。

    このことは、少しよく自分を省みれば、自分にもそういうところはあると思うことはできるでしょう。ところが、日常の生活のなかでは、あたかも自分にはそんな要素はない、と思って、他を批判したりします。

    これは、自分(「私はこういう人間である」)を限定して認識しているからで、その限定の幅・範囲が狭いほど、他人と自分は違うという思いも強くなります。

    これはどういうことかというと、「自分はこういう性格だ」というときの性格(要素)の数が少ないということで、他人と共有する要素が少なくなり、自分と他人の共通点を認識できない=自分と他人は違うということになるのです。

    このような人は、悪いことをしている人を見て、自分にはそういうところはないと思い、他を批判、断罪するようになります。


    2.人間はほぼ同じ心の要素を持っている

    人間というのは皆、ほぼ同じ様々な要素を持っていると思われます。
    ただ、どの要素が表面に表れているか、隠れているかの違いに過ぎないということです。どの要素がより発達しているか、未発達であるか、ということです。

    このことは、ユング心理学の元型という概念から考えると導き出されます。元型とは、人間に共通する心や行動の元パターンと言ったらいいかと思います。この元型は人間全体が共有する無意識の領域にあると言われています。ですから、私たちの心の要素やそこから生じる行動などの元は皆同じものを持っているというのです。

    ユングの元型を持ち出すまでもなく、心の中を落ち着いて理性的・合理的にのぞいて見れば、人間の中にある要素はだいたい同じだということに気づくのではないかと思います。

    そして、この「人間というのは皆、ほぼ同じ様々な要素を持っている、それは善の要素も悪の要素も」という認識(人間観)は、万人を平等に尊重し、寛容の心、慈悲の心を培うことにつながります。

    しかし、人間はなかなか悪の要素、マイナスの要素が自分にあることを認めたがりません。また、あまりにもすばらしい要素についても自分にとてもそんなものはないと思い、その要素があることを否定します。


    それでは、ここで私たちの内面には様々な人格が存在するということをいくつかの心理学理論からみていきましょう。

     

     

     

  • 第29回心理学講義 『子供の発達・人格形成における父親の役割』

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                         「子どもの発達・人格形成にはたす父親の役割」


      愛着理論でもみてきたように母親と子どもの関係は、子どもの生命維持を土台とした生物的なものである。それにひきかえ父親はどうだろうか。

      ほ乳類で子育てに関わる父親の割合は3%程度であるという。しかも、直接的に子育てに関わるのではなく、母子を外的から守るというような間接的なものである。

      それに比べ人間は家庭を持ち、父親も養育にあたる。このようなことは人間に特有なものと言ってよい。それは、人間社会が高度に組織化、役割分化した社会であることとも関係があると考えられる。

      子どもの発達・人格形成にはたす父親の役割というものを考えるにあたって、このあたりのことがポイントとなると思われる。


    1.父親の役割

      人間は単に体が成長するだけでは、大人になったとはいえない。社会のなかで社会の一員としてある一定の役割を果たし、自立して生きていけるようになって大人と言える。

      高度に組織化した人間社会では、そこで生きて行くにあたってのルールや規則・規制がある。このような社会で生きるうえで必要な社会的・文化的ルール・行動様式を身につけていくためには、子どもの身体的成長に気を遣う母親的要素だけでは足りない。そこで父親の役割が出てくる。

      このあと講義のなかで何回か言及していくことになるが、まずは、父親の役割というものを列挙してみることにする。

    ・強く頼もしい庇護者 →子どもは安心感を得ることができる。
    ・怖い父親 →禁止・抑止→子どもは欲望のコントロールを学ぶ。
    →また、社会でのルール・規範を学ぶ。社会性を身につける。
    ・厳しさ → 近寄りがたさ、距離をとる →自立、主体性
    → 現実、社会の厳しさを教える。
    ・興味や活動の刺激 →子どもの関心を外界へ向け、行動的にする。
    ・成長のモデル(自我理想) →自立、行動のモデル、生きる見本、生きる力


    2.発達段階的にみた父親の役割

    【言葉の説明】エディプス・コンプレックス:
    〔オイディプス王が父を殺して母を妻としたギリシャ神話にちなむ〕
    精神分析の用語。子供が無意識のうちに,異性の親に愛着をもち,同性の親に敵意や罰せられることへの不安を感じる傾向。フロイトにより提唱され,多くは男子と母親の場合をさす。 → エレクトラ-コンプレックス(Weblio辞書より引用)


      4歳頃、精神分析でいうエディプス期に入ると、父親は母親の関心・愛情をめぐるライバルとなる。しかし、父親は万能に見え、適わない存在。自分を抑え込む強い力をもつものとして恐怖の対象にもなる。ここで子どもは父親に対する愛着と恐怖・闘争の間で葛藤する。

      そしてその後、子どもは、父親には適わないことを認識し、母親を独占しようという幼い願望を諦めるようになる。

      次の段階で、父親を理想像として同一化しようとする。強い適わない存在に自分もそのようになろうとする。そうすることで、父親への愛着と恐怖・闘争の葛藤を乗り越えることができる。

    (以上は、4歳くらいから12,3歳までの間に漸次起き、個人差があるので、明確な年齢はしめせない)

      やがて思春期(13~18歳くらい)になると、父親にずっと同一化し続けることも越えなければならない。父親とは違う自分の人生を歩いて行くためには、次の段階に進む必要がある。父親から距離を取り、父親に反発するようになる。いわゆる反抗期である。

      この時期は母親との関係も変化する。それまで甘える対象であった母親を、何かとうるさいと感じるようになり、反発するようになる。これも自立の現れである。母性の受容する力=飲み込む力から脱却して自立しようとしているのである。

      このとき、父親の役割がある。子どもを手放せない(子離れできない)母親を支える役割である。親離れしていく寂しさを共有し、子どもの成長を喜ぶことを、ともに行うことによって、母親の子離れを促進させる。そいう形で父親は子ども成長の手助けをする。

     

     3.父親の不在(役割の欠如)の影響

      父親の不在という場合、死別や別居・離婚、長期出張などによって物理的に父親がいないということだけでなく、一緒に暮らしていても存在感がなく、父親としての役割をはたしていないというような、機能不全の状態(機能的不在)もその影響は同じであるという。もちろん、子どもがいくつくらいに不在状態になったかで、与える影響は違ってくる。

      現代は父親の存在が希薄になっている時代である。普通の家庭でも機能的な父親不在の状態は珍しいことではないのかもしれない。

      では、父親の不在がどのような影響があるかをみていく。

     

  • 第28回心理学講義『愛着理論②』

    第28回心理学講義 『愛着理論②』

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    2.愛着形成に必要なもの

    (1)アカゲザルの実験からわかること
    前回の講義で、アカゲザルの実験をご紹介したが、それに引き続き行われた実験についてみてみる。

    前回ご紹介したのは、以下のような実験である。

    アカゲザルの実験とは、代理母として、哺乳瓶をつけた針金製の母ザルと、哺乳瓶をつけてない柔らかい布製の母ザルを作り、子ザルの行動を研究したものである。

    子ザルは、空腹を満たせる針金製の母ザルよりも空腹は満たせないが、柔らかい肌触りの母ザルと過ごす時間が圧倒的に多く、不安や恐怖を感じる場面では、柔らかい感触の母ザルにしがみつくことが確認された。このことで、心地よい身体接触(スキンシップ)が重要な意味を持つことがわかる。

    この実験の前に実験室で、子ザルたちを1匹ずつ区分けして、栄養や感染症に気をつけて育てていた。そうして育てられていた子ザルたちの様子はおかしかった。生気がなく、陰気で好奇心にも欠け、ぼんやりとして、体を揺すり続けたりした。また、大人のサルと一緒にされることに拒絶反応を起こした。

    このことから、前回紹介した実験が行われ、心地よい身体接触(スキンシップ)が愛着形成に重要な意味を持つことがわかったのであるが、その後、愛着形成に必要なものがそれだけでないこともわかった。


    (2)決定的に必要な要素「応答」

    布の柔らかい母ザルに育てられた子ザルにも異常がみられたのである。外界に対して無関心で、非社交的で他に対する不安が強かった。

    では、何が欠けていたのだろうか。それは、活発な応答性だった。
    泣けばすぐにそれに応え、話しかけたり、見つめ直したりなど、赤ちゃんの反応に対して丁寧に応答してやることである。布の母ザルでは、柔らかな心地よい感触はあっても応答はしてくれない。

    そこで、布の母ザルを天井からぶら下げて揺れて動くようにした。子ザルが抱きつけば動くようにしたのである。それだけのことで、非社交的な無関心さや自傷行為などの子ザルの異常な行動はなくなり、活発さ、好奇心が出てきた。

    さらに、子ザルを雌犬と一緒に飼ったところ、子ザルたちの生育は、吊されて動く布の母ザルと育つよりも良かった。特に社会性の発達はたいへんよかったということがわかった。犬は本当の母ザルほど世話ができなくても、吊されて動く母ザルに比べこれだけ発達に効果があるのである。犬も子ザルが泣けば舐めたりして、動く布の母ザルよりも応答性は高くなることがその効果なのだろう。また、スキンシップのときに生きものの体温・温もりを感じることができるという点も重要なのだろうと思われる。

    人間でも活発な応答が必要なことは、実証されている。前回の講義で紹介した、気むずかしいという素質を持つ赤ちゃんによる実験などがそうある。

    そして、このしっかりとした応答が、自分を見守っていてくれるという安心感を生み(=基本的信頼感および基本的安心感の形成)、愛着の対象を「安全基地」としてその後の成長が促される。


    3.愛着に問題を抱える人の特徴

    (1)自己否定的 卑屈、
    親から愛されない(しっかりした応答や世話を受けなかった)
    → 自分には価値がないと感じてしまう。

    (2)「よい子」を演じる
    親から愛されない → どうしたら愛されるか → 親の気に入る「よい子」になる
    認められるために頑張りすぎる。自分の本来の感情を抑えて気に入られようとする。

    (3)完璧を求める(「全か無か」、こだわりが強い)
    完璧であることで親に認められるので。
    完璧でないと自分の価値を感じられない。

    (4)安心感がない
    しっかりと応答をしてもらえなかったことで、見守ってもらっているという安心感が得られず「基本的安心  感」が形成されなかったことによる。

    (5)傷つきやすく、ものごとを否定的に受け取る
    愛されないことで自己否定的になり、こんな私に対して人が好意を持って接してくれるわけがないとい   う思いが、人の自分に対する反応を否定的なものと捉え、傷つく。

     

  • 2014年夏期セミナー心理学講義 「自己愛について」

    2014年夏期セミナー心理学講義 「自己愛について」

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    「自己愛について」

    現代人の精神構造を解明するうえで重要なものて自己愛というものがある。
    自己愛という概念は、精神分析の創始者であるフロイトが本格的に研究し唱えた。その後、フロイト派の人々が研究発展させてきた。

    自己愛=ナルシシズムというのは、水に映る自分の姿に恋をしたギリシャ神話のナルシスにならって命名されたもの。

    ナルシスの神話でわかるように、自己愛とは自分に対するとらわれ、自分の関心が自分に向いている状態をいう。
    精神分析学的にいうと、リビドー(さまざまな欲求のもととなるエネルギー)が自分に向かっている状態である。

    自分に向かう関心、エネルギーが強くなると周囲(他)へ向かう関心、エネルギーは弱まる=自己中心的になる。

    自己愛は誰にでもあるもので、外出前に鏡を見て髪型を整えたり、女性なら化粧するというのも自己愛である。
    自己愛の強さは、自分の自己像(自己イメージ)が自分の思い通りであるかどうかにとらわれる強さであり、鏡を見て髪型、化粧に強くこだわるのは自己愛が比較的強いといえる。

    適度な自己愛であれば問題は少ないが、あまりにも自分に意識関心が向かい、自己愛が強過ぎるとさまざまな問題が生じることになる。


    (1)自己愛は発達過程において必要

    乳幼児期に自己愛を満たすことができれば、それは適正な自尊心(自己愛)となり、歪んだ肥大した自己愛にはならない。

    自己愛は発達の過程において生じる自然なものである。
    通常の親子関係においては、一人では生きて生きようのない子どもに対して、親がさまざまな面において愛情をもって奉仕する中で、自然と生じてくる意識状態であり、幼い子どもにとっては、健全な一つの発達段階である。
    そして、それが適切な時期に適度に満たされつつ、子どもの自立の過程において、適切な時期に適度に満たされなくなっていき、子ども側から見れば、ほどよく断念させられることによって、より、「現実的な」自尊心や自信に姿を変えていく。

    しかし、このプロセスがうまくいかない場合がある。

    すなわち、肥大した幼い自己愛が、大人になってまで残ってしまう場合である。現実の「等身大の自分」を自覚できず、自己を「誇大視」し続けて、自分は何でもできる(できる存在でありたい)といった「万能感」を持ち続ける。これは、社会生活を行う上では、当然のごとく、他人との調和ができず、問題を生じさせやすくなる。甚だしい場合、病的な自己愛として人格障害とされる。


    (2)自己愛人格の特徴


    自己愛が強い人の特徴を挙げてみると、

    1.自己誇大視:自分の能力は人より優れているという思い。

    2.自己特別視:自分は他と違い特別な存在だという思い。

    3.理想的な自分をいつも実現しようとする。
    限りない成功、権力を得ること、才能を発揮すること、より美しくなることなど理想の実現を追い求める。自己愛が肥大化しているので、それを満たすために常に地位であったり、自分を認めてくれる人であったり、物によって価値を感じようと貪欲に求める。

    4.常に周囲からの賞賛、好意、特別扱いを得ようとする。さらにそれを得て当たり前と思っている。

    5.現実の自分がうまくいかないとき、そのことを認めない(否認)する、また、投影によって他の責任にする。

    ①「否認」のメカニズム
    自己愛的イメージ(誇大自己)と現実の自分との一致が自己愛を満たす、ということから考えて、誇大自己とかけ離れている自分の現実を認めることはできず、自分の問題を直視しないで、自分には非がなく問題はないと思いたいという自己愛的欲望によって、他に責任を押し付けることになる。

    自己愛というのは自分への愛着であるが、現実の自分への愛着ではなく自己イメージへの愛着であり、それは自分に都合よく思い描かれた自己イメージ=誇大自己である。

    よく、「本当の自分はもっとできる」「本気出してないだけだ」と言う人、思う人がいるが、この場合の本当の自分とは自己愛的自己イメージ=誇大自己のことである。なかなか現実の自分を受け入れられないので、自己イメージにしがみつこうとする。
    それが、他のせいにし、自分の責任を否認することになる。

    ②「投影」のメカニズム
    そして、他に責任をおしつける手っ取り早い方法として「投影」がある。
    投影は、自分にあることを認めたくない要素、「内なる悪」を外部に追い払い自分から消去することである。
    自己愛が強いほど、自分にマイナス要素があることを認めたくないので投影が起こりやすくなる。

    自己愛が強い人は、自分のマイナス面だけでなく、世界の悲惨なこと(飢餓、紛争などで苦しんでいる人がいること)なども見ようとせず、自分の自己愛を満たすことだけに意識が向いている。

    6.共感の欠如
    自己愛が強いということは、自分にばかり関心が向かっているので他人の気持ちがわからず、人に共感できない。こういう人が他人を大切にするのは、自己愛を満たすためであり、相手のためにやっているのではない。


     

  • 2014年GWセミナー心理学講義  「認知療法、マインドフルネス認知療法」

    2014年GWセミナー心理学講義『認知療法、マインドフルネス認知療法』

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     1.認知療法

    認知療法とは、自分の感情はものごとの捉え方やものごとにたいする考え方によって決まるということを前提にしています。その自分のもの事の捉え方のくせや思考パターンを知り、極端な偏った捉え方の場合、それを柔軟性の高いものに変化させていくことで、感情・気分ひいては行動の改善を図り、社会への適応性を高めるための方法です。


    (1)感情は現象をどう考えるかで決まる

    認知療法は、「人の感情・気分というものは、現実の物事や状況によるのではなく、その人の物事の捉え方・見方に左右される」という事実から出発します。

    同じ状況(現象)を経験しても、その人のものの考え方・捉え方で苦・楽、幸・不幸が決まります。その現象によってつぶれてしまうか、バネにして成長していくかも、ものの考え方で決まってきます。幸・不幸は心次第ということです。

    これは仏教の「すべては心の現れ」という教えと同じです。特に、大乗仏教の深層心理学と言われる唯識思想がそうです。

    また、エピクテトスという古代ギリシャの哲学者も
    「人を悩ませるのは、事柄そのものではなくて、事柄に関する考えである」と語っています。


    (2)「心のくせ」「認知の歪み」「自動思考」

    それぞれの人には、それぞれの人特有の物事の捉え方(認知のパターン)があって、それが感情に影響を与えています。例えば、いつでもネガティブな考え方をしている人は、憂鬱な気分に悩まされることになります。憂鬱になり、感情が不安定なため社会に適応できにくい人のなかには、自分の心を苦しめるような片寄った極端なものの見方(認知の歪み、マイナスの心のくせ)をしていることが原因と考えられる場合が多くあります。

    認知とは簡単に言えば、外界をどう捉えるかということです。それが「歪んで」いるとは、例えて言えば、外界を映す心の鏡がグニャリと曲がっていて「歪んで」いるということで、現実をそのまま受けと止めず、極端な偏った捉え方をするということです。少しの失敗を大げさに捉え「自分の人生はもうおしまいだ」と考えてしまうことなどがその典型です。このように捉えれば心は落ち込みます。

    ですから、自分の「認知の歪み」のパターン、つまり「心のくせ」を知り、それを修正し、柔軟性の高いものに変化させることができれば、気分・感情のコントロールすることに役立ちます。

    しかし、「心のくせ」を自覚することはなかなか難しいことです。「心のくせ」はすっかり身についてしまっているものなので、自分で意識しないうちに自動的に出てくることが多いからです。

    「ある状況」には「こう反応」するということが、自分にとって当たり前になっています。自分で「こうだ」と考えて「ある状況」に対する捉え方・考え方を決めているわけではなく、無意識のうちに自動的に反応しています。自動的にある思考が生じてきます。「心のくせ」はこのように自動的に生じてくるものなので、認知療法では「自動思考」と言います。例えば、道で知り合いに会ったときに、相手が知らん振りして行ってしまったというときに、「何で無視するんだ、ひどい!」などという思い(思考)が自動的に出てきます。これが「自動思考」であり、そのように受け止めてしまう「心のくせ」なわけです。

    このように人のものの見方・捉え方というものは、ほぼ固定していて、「こういう出来事」には「こういう捉え方」をするというのが決まってしまっています。「固定観念」というものですね。

    したがって、落ち込んだり、沈んだ気分になったときには、その基になっている考え方を自覚していないものです。「心のくせ」は文字通り「くせ」であるので自分が気づかないうちに作用して、いつの間にか気分を暗く重苦しいものにしてしまいます。

    「心のくせ」は、人が生まれてから、子供時代、思春期・青年期を経て大人に至るまで経験し学習したことから成り立っています。
    人生の初期に学習したことほどしっかりと身に染み込んでいて、それを自覚することは相対的に難しいと思われます。成人してから学習したことはそれに比べ比較的容易に自覚できることが多く、それを修正していくことも比較的容易であることが多いと言えるでしょう。


    (3)スキーマ(=コア・ビリーフ、中核的な思い込み)

    さらに自動思考の奥にそれを生じさせる中核的な思い込み(スキーマ、コアビリーフ)というものがあります。

    スキーマ(中核的な思い込み)には以下のようなものがあります。

    ・自分はダメな人間だ。
    ・人はなんでも完全にできないといけない。
    ・何でも自分でやらないといけない。
    ・すべての人から愛されなくてはいけない。
    ・人は自分を利用するだけだ。
    ・人に弱みを見せてはいけない。
    (以上、大野裕著『こころが晴れるノート』創元社から引用)
    ・自分はみんなから嫌われている(自分のことを好きになる人なんていない)
    などです。


    (4)認知療法の対象

    うつ、パニック障害、強迫観念、被害妄想、落ち込み、不安、心配、怒り、卑屈などの強い人など。精神病理でなくても、人間関係、ストレス、自信の強化などにも有効で自己改革に役立つ方法です。


    (5)認知療法の手順

    ①思考と感情・気分の関係を知る
    どんな考え方をするとどんな感情・気分が生じるかを知る。

    ②「認知の歪み」の種類を知る

    ③自分がどんな「認知の歪み」をもっているか自覚する
    落ち込んだとき、沈んだ気分になったときにどのような思考(自動思考)が生じたかを記録する。そうすることにより、自分の認知のパターンがわかる。

    ④自覚した思考を適正な思考に修正する
    自分の認知パターンがわかり、それによってある感情・気分が生じていることを理解した次の段階として、認知パターン(思考)を合理的で適応的なものに修正する。

    ⑤スキーマ(中核的思い込み)を知り、修正する
    (スキーマに関しては取り組まない場合もある。)

    以上が認知療法の基本的手順です。

    まずは、(1)から順にすすめ、(3)を何回か繰り返し、ほどよいところで(4)の段階にいきます。(4)を繰り返すうちに少しずつ自分のものの受け取り方に変化が生じてきます。

    実際にやってみると分かりますが、自分の心(視野、考え方)が広がって行くのがわかります。
    固定したものの見方、捉え方(=観念)というのは、私たちの心を硬直させ、狭めてしまうものです。認知療法はその硬直した観念(物の捉え方)にアプローチします。 大らかで、柔らかい心になることによって、ものの捉え方も柔軟になります。

    仏教では「ものをありのままに見る」ことが悟り(心の揺るぎない安定状態)に至るうえで重要だと説きます。観念に曇った心は、ものをありのままに見ることはできません。ですから、認知療法は仏教の悟りにも通じる心理療法だと言えるでしょう。そして、悟りの手前の日常での心の安定を得るうえで、たいへん有効です。

    それでは、以上の手順を詳しくみていきます。

     

     

  • 2015~16年末年始セミナー心理学講義 『愛着理論』

    2015~16年末年始セミナー心理学講義 『愛着理論』

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     1.愛着とは

    (1)愛着とは何か

    愛着とは、仏教では愛着は煩悩の一つで、根本的な3つの煩悩のうち貪り(貪:とん)といわれるもので、苦しみを生じさせるものとされる。

    心理学的には、「愛着」という概念は、養育者との情緒的な特別な結びつきのことを言い、乳幼児期の赤ちゃんが心身の健全な成長のために必要な安心・安全を提供するものとする。
    この講義では、心理学的概念としての「愛着」についての理論を講義する。


    (2)愛着は生物学的な現象

    愛着は、人間だけに見られるものではなく、猿などの霊長類や犬、馬などにも見られるもので、成長のために組み込まれているものと言える。鳥における刷り込みなどもそうである。

    すり‐こみ【刷(り)込み】
    生まれたばかりの動物、特に鳥類で多くみられる一種の学習。目の前を動く
    物体を親として覚え込み、以後それに追従して、一生愛着を示す現象。動
    物学者ローレンツが初めて発表した。刻印づけ。インプリンティング。
    (デジタル大辞泉より)

    観察実験で、出産直後1時間以内の赤ちゃんでも、単純な絵よりも、人間の顔の絵の方を目で追う傾向があることがわかっている。また、他の音よりも、人間の声に耳を傾けるということも実験結果でわかっている。

    人間は、赤ちゃんから子ども時代・思春期をへて大人になっていくが、赤ちゃんは自分では何一つできない。すべてを面倒見てくれる人がいなければ生きていけない存在だ。愛着はそうした面倒を見る人と赤ちゃんとの間で形成されるものである。

    愛着は、生物として成長し生存していくためには必要で、個体の生存と種の保存のためには必要であると「愛着理論」ではいう。


    (3)愛着は母子の相互関係

    赤ちゃんは自分の欲求に応えてくれる母親の存在があればこそ成長していくことができる。適切な世話は母親が赤ちゃんを可愛いと思い愛着していくことでうまくできるようになる。
    乳児が相手の顔を見つめ微笑み、声を出す「天使の微笑み」とも言われるものがあり、どんな人でも赤ちゃんのその微笑みを見ると可愛いと思い愛着を誘う。そうして母親の愛着が芽生え、愛情深い親身な世話の原動力になる。愛情深い親身な世話によって、赤ちゃんも母親に愛着するようになる。このように愛着は母子の相互関係で成立する。

    自分の欲求に対して応えてくれる対象に愛着が作られると、子どもは愛着の対象とそれ以外の存在をはっきり区別し、愛着対象だけを追い求めるようになっていく。そして、世話をされるのが愛着対象でなければ子どもは十分に満足しなくなる。

    この乳幼児期の愛着の仕方がその後の対人関係をはじめ、ストレスや困難にぶつかったときの処し方に影響するということがわかってきている。


    2.ボウルビィの愛着理論

    イギリスの児童精神分析家のボウルビィが愛着という概念によって「愛着理論」を作った。愛着理論のできる先行の研究として、ホスピタリズムの問題とアカゲザルの実験があるので紹介する。


    (1)ホスピタリズム

    ホスピタリズムは施設病とも言われ、施設で育つ子どもに心身の発達の遅れが著しく、病気に罹りやすく、治りにくく、死亡率も高いというもの。1920年ころに最初の報告がされた。
    栄養は十分与えられていても発達の遅れの問題が生じて、子どもたちは、人と接触しようとせず、表情も乏しく、自分の殻に閉じこもり、じっと座り込んでぼんやり宙を見つめていたり、意味の無い同じ行動を繰り返したり、自傷行為を行ったりという状態だった。

    どうしてこのような問題が起こるか研究した結果、施設では、集団で保育され、スキンシップがなく、親身になって子どもの世話をするのではないという養育環境がその原因であるということがわかった。そうしたことから、スキンシップの重要性が理解され徐々に改善されていたが、解決されたわけではない。また、里親を積極的に募ることで改善を図ろうとした。


    (2)アカゲザルの実験

    アカゲザルの実験とは、代理母として、哺乳瓶をつけた針金製の母ザルと、哺乳瓶をつけてない柔らかい布製の母ザルを作り、子ザルの行動を研究したものである。

    子ザルは、空腹を満たせる針金製の母ザルよりも空腹は満たせないが、柔らかい肌触りの母ザルと過ごす時間が圧倒的に多く、不安や恐怖を感じる場面では、柔らかい感触の母ザルにしがみつくことが確認された。このことで、心地よい身体接触(スキンシップ)が重要な意味を持つことがわかる。空腹を満たせることだけでは愛着行動は引き起こせないということになる。


    (3)母親との特別な結びつき「愛着」

    ボウルビィはこれらの研究をさらに一歩進め、「愛着」という概念で説明した。

    ボウルビィは、戦災孤児など親がいない施設で養育されていた子どもたちの調査を第二次世界大戦後にWHO(世界保健機関)に依頼されて行った。
    ボウルビィは、そうした子どもたちの問題を母性愛の剥奪という観点から説明した。母親と離されることでその愛情を受けることができず、それによって、母親との特別な結びつきが作られないことが、孤児たちの問題の原因であるとした。この母親との特別な結びつきの性質を「愛着」と呼んだ。


    (4)愛着は特定の人との関係

    愛着は、一人の人との緊密な関係によって作られることがわかっている。それは通常母親であるが、何らかの理由で母親に育てられなくても、愛情深く、親身に育ててくれる人がいればその人と愛着関係は成立する。そして、その特定の対象者だけに愛着行動をとり、それ以外の対象に対しては愛着行動は抑えられる。人見知りするのは母子の愛着関係が成立していることを表している。

    ※愛着行動:愛着を抱いた対象への接近や接触、後追い行動、微笑、発声など

    ホスピタリズムの問題が報告され、その改善が行われてきていたが、愛着理論では「愛着」という概念で問題の原因を一歩深く説明することができた。施設では、複数の人が入れ替わりで接することになり、特定の人と十分な愛着関係を結ぶことがなかなかできない。複数の人にスキンシップもある養育をされても、養育者が入れ替わる環境では特定の人との安定した関係・心の絆(=愛着)を築くことは難しい。
    このように健全な安定した愛着を形成できないと、歪んだ不安定な愛着が形成され、日常生活に大きく障害となるものを愛着障害という。


    (5)イスラエルのキブツの例(※キブツ:イスラエルの集団農業共同体)

    一人の人との関わりでなければ愛着関係は成立しないということの例として、イスラエルのキブツと呼ばれる集団での養育の仕方がある。

    キブツでは、合理性、効率性と子どもの自立のためにもいいという予測のもとで、子どもの世話は集団で行い、夜も母親と過ごすことなく子育てをした結果、不安定な愛着行動をとるようになったということが研究によってわかった。その後、キブツでの養育方法は変更された。
    集団での養育が愛着形成に障害を生じさせることと、愛着関係が子どもの健全な成長に必要だということが、この例からもわかる。

     

     

  • 第2~4回心理学講義 『自他の区別を超えて ~自己成長のセラピー講座~』第2~4回

    第2~4回心理学講義
    『自他の区別を超えて ~自己成長のセラピー講座~』第2~4回

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    1.意識の構造図の説明
    ◎ユングの意識図の説明・・・図① 参照

    ここで、意識のスペクトル図の各段階の詳しい説明の前に、私たちの意識の構造について説明しておきます。今後のスペクトル図の各レベルに基づいた講座の内容をより理解するためには必要かと思います。

    これから説明する意識の構造はユング心理学を基にしています。
    図を見てください。波線より上の部分が表層意識です。表層意識は意識全体(表層意識・無意識を含めた)の5~10%程度と言われています。よく氷山の一角と表現されます。
    この表層意識は論理的、合理的、分析的、功利的、言語的という性質があります。

     

    波線の下は無意識です。この波線は表層意識と無意識を分ける壁・柵です。
    無意識の領域も二つに分けられます。上の方を「個人的無意識(潜在意識」)といい、下の方はさらに深い意識で、人類に共通している無意識で「集合的無意識」といいます。

    ◎個人的無意識(潜在意識)
    個人的無意識は、この人生において経験されたデータ・過去からのデータが蓄積されています。故意にあるいは、意図せずに単に忘れ去ったか、抑圧したデータが蓄積されている貯蔵庫のようなものです。今まで人生で経験してきたすべてのことが、蓄えられています。たった一回経験したことでもなくならず、残っています。

    タンスの引き出しみたいなもので、普段はしまい込んでいて、引き出しを開けて「ああ、こんな服があったんだ。小さいとき着てたんだ」と。これは潜在意識にあったデータが表層意識にのぼってきた状態で、昔のことを思い出したということです。
    タンスの奥の方にしまい込んであるものは、なかなか思い出しません。しかし、退行催眠などを行うと小さい頃のことを思い出します。普段なかなか思い出せないことでも思い出します。子供のころのことだけでなく、前世かもしれないという記憶がよみがえることもあります。前世療法というものですね。(前世があるということも、ないということも、ともに証明することはできません。)

    潜在意識というのは、大変賢いです。例えば、ある部屋に通されて1分位待たされたとします。「こちらにどうぞ」と言われて、その後別な部屋に通されました。そこで「さっきの部屋に何がありましたか?」と聞かれたと。そのつもりではじめの部屋にいたのではないので表層意識ではあまりよく覚えていません。しかし、潜在意識にはしっかり情報は入っています。潜在意識は部屋に何があったか覚えています。

    そして、一度経験したことより何度も何度も繰り返し経験したことの方がしっかりと潜在意識に刻みこまれています。潜在意識に強く刻み込まれているものほど、私たちの行動に強い影響を与えます。

    そのことを詳しくお話しするために、潜在意識にデータがどのように刻み込まれるかというお話をします。この表層意識と潜在意識を分けている波線は表層と潜在意識を分ける壁・柵です。これは、7才~12才までの間に形成されます。ちょうど、小学生の年代ですね。中学生になるとほぼできあがり、大人と同じになります。
    余談ですが、中学生になると電車とか乗り物の運賃が大人料金になりますが、意識の形成過程からみても大人と同じになるということで理にかなっていて面白いですね。

    柵ができる前の子供時代というのは、表層意識と潜在意識の区別がほとんどありません。子供は潜在意識丸出しで生きていると言ってもいいと思います。潜在意識は活き活きとしたエネルギーの創造性の源です。ですから、子供は元気なんですね。
    また、「ある」か「ない」かの世界です。中間がないんです。ですから、こうしたいと思ったら、やらなければ気がすまない。我がままなんですね。子供は我がままでしょ?

     

  • 第1回心理学講義 第1回心理学講義 『自他の区別を超えて ~自己成長のセラピー講座~』第1回

    第1回心理学講義
    『自他の区別を超えて ~自己成長のセラピー講座~』第1回

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    それでは、「自他の区別を超えて ~自己成長のセラピー講座~」をはじめます。

    まず、講座の名前の説明からしたいと思います。チベットでは、仏教経典の講釈を行うときに経典の名前の説明からはじまります。その経典がどういうものなのか名前を説明すればわかるということです。

    それを真似するわけではありませんが、講座の名前を説明することによって、この講座がどういうものなのかつかんでいただけるのではないかと思いますので説明します。

    その前に「自己成長のセラピー」という言葉は、ケン・ウィルバー著の『無境界-自己成長のセラピー論』(吉福伸逸訳 平河出版社)からお借りしましたことをおことわりしておきます。

    「自他の区別」というのは、本来私たちの意識(何の制限もない広がった意識)とは違う「制限された意識(状態)」のことをさしています。

    「超える」というのは、その制限された意識の枠を超える・壊して、本来の意識に戻っていくということです。

    私たちは、自分で「私」という狭い枠を作ってその中で苦しんでいます。
    その枠が壊れたとき、そこには制限もない広々とした自分というものが経験されてきます。それが、本当の幸福への道なのです。

    副題の「自己成長」これは心の成長あるいは、意識の拡がりを意味します。
    「セラピー」これは「療法」です。
    近頃は、心理療法というものが人気がありますが、「サイコ・セラピー」といいます。 この講座のセラピーも心理療法と受け取っていただいたらいいと思います。

    講座というと一方的に聴くだけというのが一般的ですが、「心」の話となると頭でわかるだけでなく、「心」でわかる=気づきというのがたいへん重要になります。
    気づいて実感することですね。それこそ「セラピー」です。

    本講座では、単に知識をお伝えするだけでなく、エクササイズを行い、少しでも「気づき」を経験していただき、皆さんの成長に少しでもお役立てばと思いました。それで、「セラピー」という言葉を入れました。

     

    1.トランス・パーソナル心理学とは?

    この講座の背景となっている心理学は、トランス・パーソナル心理学という心理学です。 トランス・パーソナルとはどういう意味かといいますと、「トランス」とは「超える」、「パーソナル」は「個」という意味です。

    ですから、トランス・パーソナル心理学を単純に訳すと「超個心理学」「個を超える心理学」となります。この場合「個」というのは「個人」「自我」と考えていただいたらいいと思います。そうすると「自我を超える心理学」ということになります。

    「超える」とはどういうことか説明しますと、二つありまして、一つは水平方向です。
    これは、横へ の広がり、人と人との連帯・つながりということです。
    もう一つは垂直方向で自分の内面に深く入り込んでいって、「自我」を超えた意識状態を体験するということです。
    言葉の表現上、水平と垂直と分けて話していますが、結局は同じことであるとわかります。

    自分という 枠を壊せば、意識は全体に拡がっていくわけですから、水平にも垂直にも拡がるということになります。

     

      2.トランス・パーソナル心理学の成立過程

    トランス・パーソナル心理学の成立過程を見ていくことで、トランス・パーソナル心理学がどういうもの なのかわかってくると思いますから、簡単にその成立過程を見ていくことにしましょう。

    トランス・パーソナル心理学は、1960年代の後半にアメリカで成立しました。

    20世紀になって大きく発展してきた心理学は、四つの大きな流れがあります。
    その中でトランス・パーソナル心理学は第四の勢力と言われ、心理学の大きな潮流の中で最も新しい心理学の流れです。

    第一の勢力は、フロイトの精神分析です。

    ご存知の方も多いと思いますが、フロイトは無意識の発見者といわれ、その功績は高く評価されています。 現代の心理療法のはじまりを創ったのはフロイトといってもいいでしょう。
    フロイトは、神経症の原因が本 人も気づかない無意識の中に隠されていることをつきとめました。無意識にある原因に気づいていくことに よって、神経症が治っていくと唱えました。
    その主な方法は、夢を分析することによって、無意識の領域にア プローチすることです。フロイトは、人間の病んだ心の部分に焦点をあてていて、無意識というものをガラクタの集まりととらえていました。
    ただ、何でも性的なものに還元してしまうので、そのことに抵抗を示す人たちもいます。
    その後、多くの弟子たちが、彼の理論を発展させて現在にいたっています

    第二の勢力は、スキナー等の行動主義心理学です。

    物理学が科学として成立してきたことで、心理学も「科学」として成立させようという人たちがいました。しかしそのためには、「心」という目に見えないものを対象にしても客観的科学として成り立ちにくいので、目に見える「行動」(人間の生物機械的側面)を研究対象にしました。
    つまり、科学としての心理学は対象を客観的な行動に限定すべきだとし、人間を生物機械的にとらえ、おもに「刺激-反応」のパターンで理解しようとするものです。
    この考え方によれば、人間の行動は基本的に、すべて無意識の行動となります。
    フロイトが意識と無意識を分けたのに対して、行動主義では意識の存在すら認めないことになります。

    ですから、心に悩みをかかえている人が解決の参考になるのではと考えて、心理学の本でも読んでみようと、 行動主義の心理学の本を読んでもあまり役に立ちません。
    そして、「何だ心理学なんて役に立たないや」ということになります。(ただ、行動主義の中から出てきた認知療法はうつや不安神経症の人たちに対する療法としてかなり一般的になり効果が出ています)

    第三の勢力は、アブラハム・マズローの人間性心理学です。

    マズローは、はじめ行動主義心理学の研究者として出発しました。
    しかし、自分の子供が産まれ、子供を観 察していくうちに行動主義の人間を機械として見る見方に疑問を感じだしました。

    また、第一の勢力である精神分析は、病んでいる人の心の研究で、その点にもマズローは疑問をもち、より 健康な人たちを研究対象とした積極的な心理学を打ちたてました。それが、人間性心理学です。

    マズローは人間の欲求を階層的にとらえました。 最下層にあるのが、「生理的欲求」であり、その欲求が 満たされれば、次の欲求が起こってくるというものです。そして、その基本的な諸欲求を適度に満たすことが 出来れば、人間はますます成長し、心理的に健康になっていくと考えました。

    以下が6つの基本的欲求です。

    「生理的欲求」・・・・・空気・水・食物・庇護・睡眠・性への欲求
    「安全への欲求」・・・・安全・安定・依存・保護・秩序への欲求
    「所属と愛の欲求」・・・愛されることへの欲求
    「承認欲求」・・・・・・自尊心・尊敬されることへの欲求
    「自己実現欲求」・・・・自分がなりたいものへの欲求

    また、マズローは「至高体験」というものに着目しました。「至高体験」というのは、大きな感動や喜びで 我を忘れるほど素晴らしい体験のことです。
    雄大な自然の美しさに時 を忘れ、我を忘れて感動する。そして大きな喜び、幸せを感じる。
    一般的に「ハイ」 と言われるものです。ランナーズ・ハイとか、宇宙と一体化するとか、宗教的体験なども含みます。

    「至高体験」のときの意識は、日常の意識状態とは違う意識状態で、変性意識状態と呼ばれるものです。

    そして、彼はその意味を考察しました。
    彼は、今までの精神分析や行動主義が病理的な面ばかり注目することに疑問を持ち、人間のこの「至高体験」 を起こした時の心の様子を探求することにも意義があるのではないかと考え、もっと人間の可能性、創造性、成 長、価値、自己実現など、人間の全体性、好ましく、高次な側面に焦点を当てた明るい心理学をめざしたのです。

    この明るい考え方は、「人間性心理学」として、60~70年代のアメリカの若者を捉えました。
    そして、「至高体験」は、「自己実現」している人たちの方がそうでない人たちより多いとマズローは言っています。

    この「至高体験」の研究からマズローは晩年「自己超越欲求」というものが「自己実現欲求」の上にあるんだ と言うようになりました。
    先ほど紹介した欲求の階層説の最後に「自己超越欲求」というものを加えたのです。

    マズロー自身アメリカ心理学会の会長まで務めた方でしたから「自己実現」していたといえるわけです。
    そういう人が「自己実現欲求」のさらに上に「自己超越欲求」があると唱えたということは、彼自身、「自己超越欲 求」というものを感じていたのではないかと推測できます。

    そして、この「自己超越」ということがトランス・パーソナル心理学の成立に結びついていきます。

     

     

  • 第36回心理学講義 『心の主となる』

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                 『心の主になる』

     1.はじめに

    私たちは、心によって苦しんでいます。
    どんな心が自分を苦しめ、不幸にするのか。
    どんな心が自分を楽にし、幸福にするのか。

    まず、このことを理解する必要があります。

    そして、どんな心になるかは、自分で選択できる、という理解が必要です。
    このことは、なかなか理解出来ないことかも知れません。心は自分の思うようにならない、というのが一般的に多くの人が思っていることかもしれません。

    しかし、心理学理論のなかには、自分の心の状態はコントロールできる、選択できるという理論をとなえているものがあります。

    そこで今回は、今まで行ってきた心理学講義から、その点を理論としているものを複数選んで、講義したいと思います。そうすることで、自分を楽にし、幸福になる心を選択することができるようになるための助けになればと思います。

    まず、はじめにその名称がそのまま「選択」という言葉を使っている「選択理論」からみていきましょう。


    2.選択理論の主な概念

    1)行動の仕組み

    (1)行動の4つの要素
    選択理論では、行動を4つの要素に分けて考えます。普通の捉え方と少し違いますので、単に行動と言わずに「全行動」という言い方をします。
    その4つとは、

    ①行為:通常、行動と言われる外側に現れた身体の行い、表情。
    ②思考:思い、考え。
    ③感情:気分や感情。
    ④生理反応:汗が出る、血圧が上がる、動悸がする、食欲不振、不眠、頭痛などの身体反応。

    思考や感情まで行動という言葉の枠組みに入れてしまうことに承諾しにくい人もいるかもしれませんが、仕事をしているときでも、ある動作(行為)があり、やりながら、「どうやるかを」考えながらやり、その過程において、さまざまな気分・感情が生じてくるでしょう。そして、体を動かすことや、集中していることでの生理反応はあるでしょう。これが「全行動」ということです。

    例えば、掃除・片付けをするというとき。掃除機をかけている、あるいは、雑巾で拭いているという「行為」があり、そのとき、「ここは汚れがひどいなあ」とか、「もっと力入れて拭かないときれいにならないなあ」などと「思考」したり、だんだんきれいになっていくことに「気持ち良い」という「感情」もあるでしょう。また、体を動かしていることで何らかの生理反応はあるでしょう。

    このように、1つの行動にはこの4つはつながって生じています。

    (2)コントロールできるのは、「行為」と「思考」
    この「全行動」を選択理論では、自動車に例えて説明します。4つの要素を4つのタイヤに見立てます。

    「行為」と「思考」が前輪で、「感情」と「生理反応」が後輪です。
    車を運転する場合、前輪を操作することで、進む方向が決まります。私たちの行動についても同様で、前輪である「行為」と「思考」を操作=コントロールすることで、進む方向も決まり、「感情」や「生理反応」も決まります。
    ですから、自分の行動を選択すると言った場合、どのような「行為」を行うか、どのような「思考」をするかを選択するということになります。「行為」と「思考」は選択できます。

    自己コントロールというとき、この「行為」と「思考」をコントロールすることだと理解することは、とても大切なことです。気分を直したいので、良い気分を選ぼうとしても、良い気分を選ぶことはなかなかできません。気分に影響を与える「行為」や「思考」を変える=選ぶことならできます。もちろん、長年の習慣がありますから簡単に変えられるというわけではありませんが、練習によって「行為」や「思考」を変える=選びなおすということはできるようになります。気分転換というとき、散歩したり、お茶を飲んだりするということは普通にやっているかと思いますが、それをもっと積極的に重要な場面でも行うということです。

    認知療法でも、「思考」=ものの見方・考え方を変えて「感情」を変えるということです。ここは選択理論と認知療法が同じ見解というか、事実に気づいたアプローチをしているということになります。後ほど、認知療法については取り上げます。

    (3)落ち込みも選択
    生きていくうえで、落ち込むことがあるのは普通のことです。ただ、その落ち込みを持続させているのは、その人の選択によってである、ということです。

    落ち込みを持続させるには、どのような行動をとったらいいでしょうか?
    家に閉じこもる。布団にくるまって「自分なんてダメだ」と繰り返し考える。

    一方、落ち込みが持続しそうにない行動はどんな行動があるでしょうか?
    外に出て少し早めに歩く。自分の好きな美味しい食べ物を食べる。お笑いを見るなどが考えられます。まだまだあるでしょうから、皆さんで考えてみてください。

    いかがでしょう?
    落ち込みを持続させる行動も、持続させない行動もどちらも選ぼうと思えば選ぶことができます。もちろん、持続させない行動を選ぶのは、多少の努力は必要でしょうが、できないことではありません。それを選び行うことで、気分は変わってきます。

    では、なぜ、落ち込みを持続させるのでしょうか。落ち込みを持続させるには、それなりの理由、メリットがあるからです。そのメリットとは、

    ①人にお願いしなくても助けが得られる。
    落ち込んでいることで、人から心配してもらえる。
    つまり、落ち込むことで他人をコントロールできる。

    ②逃避
    落ち込むことで、したくないこと、恐れていることをしない言い訳としている。
    「こんな状態でそれどころではない」と言ってやることから逃避している。

    ③怒りの抑制
    落ち込むことで活動を鈍らせ、怒りを抑制し、怒りから生じる破壊行動を止める。
    人は、何かうまくいかないと、怒りか落ち込むかのどちらかが生じるといいます。
    怒りは人間関係にしろ、物理的なものにしろ、破壊へと導きますから、落ち込む
    ことを選択することで、怒りの弊害を防ぐことができるというわけです。

    これらのメリットは、本当の意味で自分に楽を与える、幸福になることではなく、
    一時逃れに過ぎないことを理解する必要があります。この点は、年末年始セミナーの心理学講義で行った「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」とも共通するものです。「この行為が本当に自分の人生を豊かにし、幸福にしていくものか?」と自問することが必要です。

    (4)怒りも選択
    怒りは普通、誰にでも生じるものです。自分がやってほしくないことを他人がした場合など、「ムカッ」「イラッ」とすることはあるでしょう。問題は、そのとき、どうするかです。怒りを強くし、長引かせるか、瞬間的なもので終わらせるかは選択の問題です。

    怒りを強くし、長引かせるにはどういう行動をとったらいいでしょうか?
    相手の行ったことを何度も思い起こし、「何であんなことしやがったんだ!」と繰り返し考える。舌打ちをし、握り拳を強く握る、など。

    一方、怒りの炎を大きくしないためには、どんな行動をとったらいいでしょう?
    大きく深呼吸する。顔を洗う。屈伸するなど、体を動かす。怒りに水を差すという感じです。

    怒りを持続させる行動、止める行動のどちらも行うことはできることはわかっていただけると思います。あとは、自分がどちらを選ぶかにかかっています。

    そして、単に怒りというマイナスの心を収めることだけでなく、プラスの心に変えていくことが次の段階です。


     

  • 2016~17年年末年始セミナー心理学講義教本『アクセプタンス&コミットメント・セラピー』

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    『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
    ~マインドフルネスと価値ある行動~』

    第1部 理論編

    1.ACTは、行動主義心理学の「第3世代」

    前回(第35回)の心理学講義で、心理学の4つの大きな潮流(勢力)について勉強しましたが、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、その中の行動主義心理学に属します。他の3つは、フロイトの精神分析学、マズローの人間性心理学、トランスパーソナル心理学です。

    ACTは、行動主義心理学の「第3世代」に属します。

    「第1世代」は1950~1960年代、行動主義の名前の通り、目に見える行動を対象として研究されたもので、思考や感情は軽視していました。刺激-反応による条件付けで人の行動を捉え、人間を機械的なものと捉えていたこの「第1世代」の影響で、その後の行動主義も、人間を機械的にみるものだと思われてきました。

    「第2世代」は、認知を行動の変化を促す重要なものと捉えました。認知行動療法などがその代表です。1970年代です。

    そして、「第3世代」は、このアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)や以前に心理学講義でもとりあげたマインドフルネス認知療法です。これらは、アクセプタンス(受容)とマインドフルネスに重点をおいています。

    ACTの創始者は、アメリカのスティーブン・C・ヘイズ博士。1999年にACTの書籍がはじめて出版されました。

     

    2.ACT2つの柱

    (1)つらい思考や感情に対する効果的な対処 ~マインドフルネス~
    つらい不快な思考や感情に対して私たちは、巻き込まれて、翻弄されたり、また、抵抗したり、それを避けよう、排除しようとします。そのいずれも、思考・感情に囚われて苦しんでいる状態です。そのようにならないようにする対処法としてマインドフルネスがあります。

    マインドフルネスとは、
    ①今この瞬間の自分の外界や内界(心)の出来事にただ気づいている状態。
    思考・感情に巻き込まれないで、今の瞬間の思考や感情に気づくこと。
    ②抵抗・反発をせず心を開き、かつ執着・欲求もせず、対象に気づいている状態
    ③注意・気づきの範囲を広げたり、狭めたり柔軟性がある。

    ※マインドフルネスについては、第32回の心理学講義でも取り上げていますので、そちらも参照してください。今回のACTでの表現と少し違うところがあります。

    以下、第32回心理学講義『思考・感情・ストレスのコントロール ~心に巻き込まれないために~』から、マインドフルネスの説明のところを引用します。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    マインドフルネスとは?

    では、マインドフルネスとはどのようなものでしょうか。
    マインドフルネスとは、注意深く今の瞬間に気づいている意識状態のことです。
    もう少し詳しく説明すると

    ①心を開いて、今この瞬間に十分に気づいている意識状態です。
    今この瞬間の自分の経験していることを、偏見をもたずに注意深く客観的に観察する。そのためには価値判断を加えずに、今という瞬間の体験と向き合うことが必要です。

    ②受け入れる
    ものごとを今のこの瞬間にあるがままの形で見る。
    私たちの心は通常、ものごとをありのままに受け取るのではなく、それに好き嫌いの色づけをして、自分の気にいるものへの欲求(愛着)と気に入らないものへの排除(嫌悪)、という「とらわれ」を生じさせます。そうではなく、そのままを受け入れ認識するようにします。

    ③常に初めて体験するように、予断をさしはさまないで、その瞬間を体験する。

    マインドフルネスは、東南アジアに伝わるテーラワータ仏教のヴィパッサナー瞑想がもとになっています。ヴィパッサナー瞑想は、瞬間瞬間の自分の心身の状態やものごとを観察し気づく瞑想で、お釈迦さまが説かれた四念処という瞑想に則った瞑想法です。

    四念処とは、身(体)・受(感覚)・心・法(現象)に対する観察です。

    * 身念処:そのときどきの身体の状態に気づきをもって見守る
    * 受念処:そのときどきの感覚に気づきをもって見守る
    * 心念処:そのときどきの心の状態に気づきをもって見守る
    * 法念処:現象・ものごとを気づきをもって見守る

    という観察です。経典には細かく観察法が書かれています。

    仏教の瞑想には、サマタ(シャマタ・止)瞑想、ヴィパッサナー(観)瞑想の2つがあります。それぞれどういう瞑想かというと、

    ◆サマタ(止)瞑想:心の働きを止め、静めていく瞑想。
    ひとつの対象に気づきを持って集中する。
    ◆ヴィパッサナー(観)瞑想:サマタ瞑想で心が静めた後、現象を客観的に観つめる瞑想。気づきの対象を広げてゆく。

    マインドフルネスはこの瞑想を基にしたものです。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    (2)本当に意味ある、価値ある人生を送るための行動
    思考・感情に囚われ、巻き込まれ、翻弄され、その苦しみから逃れようとして、アルコール・薬物・ギャンブル・暴食・引きこもり・寝る・先延ばしなどの行動をとり、本来やるべき、建設的な人生に価値ある行動をとれない、という状態を改善します。

    ACTは、つらい思考・感情があっても、それを放っておいて、やるべきことをやり、意味ある充実した生活(人生)を送れるようにします。人が、生きる上での価値見つけ、その価値に沿った生き方ができるようにします。上記が、そのための2つの柱です。

     

     

  • 第35回心理学講義 『心理学の四大勢力』

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         20世紀になって大きく発展してきた心理学は、四つの大きな流れがあります。

    第一の勢力:フロイトの精神分析、
    第二の勢力:ワトソンなどの行動主義心理学
    第三の勢力:アブラハム・マズローなどの人間性心理学
    第四の勢力:トランス・パーソナル心理学


    1.第一の勢力:フロイトの精神分析

      ご存知の方も多いと思いますが、フロイトは無意識の発見者といわれ、その功績は高く評価されています。 現代の心理療法のはじまりを創ったのはフロイトといってもいいでしょう。

      フロイトは、オーストリアの精神医学者でユダヤ人です。19世紀後半に自分の治療法を精神分析と名付けました。20世紀初頭に、弟子たちと勉強会を始めるようになり、その後、精神分析学会へと発展しました。ユングやアドラーなども参加していましたが、後に2人とも袂を分かち、それぞれの心理学を創始しました。

      フロイトは、神経症の原因が本人も気づかない無意識の中に隠されていることをつきとめました。無意識にある原因に気づいていくことに よって、神経症が治っていくと唱えました。

      その主な方法は、自由連想法(ある言葉を与えられ、その言葉から自由に思い浮かぶ考えを連想させていく方法で、潜在意識にある抑圧されたものに気づいていく)、夢分析によって、無意識の領域にア プローチすることです。フロイトは、人間の病んだ心の部分に焦点をあてていて、無意識というものをガラクタの集まりととらえていました。


    1)フロイトの主要な理論・概念

    (1)無意識の発見
      フロイトはよく無意識の発見者と言われるように、私たちの行動は無意識領域によって強く影響を受けていると言います。そして、氷山がちょうど海面下にほとんど沈んでいて、海面に出ているのはホンのわずかであるのと同じように、意識領域は氷山の一角であり、ほとんどは意識下の無意識領域であるといいます。

    (2)錯誤行為
      日常において、「言い間違い」や勘違いなどの錯誤行為を犯すものです。それは、疲労であったり、他のことに意識が向いていたりすることがその原因ですが、細心の注意を払っているときにも起こる錯誤行為は、無意識の願望の現れだといいます。例えば、「~する」というところを「~しない」と言い間違えるなどは、無意識レベルでは「したくない」という願望があり、それを表面意識も気づかないうちに表現していたということだということです。

      ひとつ例をあげます。
      ある議会の議長は議会を開くにあたって、「諸君、私は議員諸氏のご出席を確認いたしましたので、ここに閉会を宣言します」と言ってしまいました。 議長が開会宣言の代わりに閉会宣言をしてしまったのも、議長は自分の属する党が議会での形勢が思わしくないので、閉会してしまいたいと思っていたのです。

    (3)エス(イド)・自我・超自我
      フロイトは人の心を3つの要素に分けて考えました。

    ①エス(イド) ~快感原則~
      エスは人間の意識の最も深いところにあると考えました。エスとは、欲望本能のことで、心地よいことだけを求め、嫌なことを避けるという欲望です。「快感原則」というものです。乳幼児の時期はまさにこのエスによる快感原則だけで生きていると言ってもいいでしょう。

    ②自我 ~現実原則~
      人は成長するにつれ、エスによる自分の欲望だけで生きていくことが、困難を生み出すことがわかってくると、周囲との関係をも考慮し、他と折り合いをつけて自分の欲望を抑えたり、延期したりと現実に合わせるようになってきます。それが自我の働きであり、現実原則を確立していくことが自我の発達であると捉えました。(現実原則とは現実に沿った行動なり態度)
    自我はエスを抑え込むだけでなく、現実の中で許される形にエスの力を変形します。芸術やスポーツなど文化的な方向に変えるなどです。

    ③超自我
      超自我とは、良心と考えられます。親や先生などの道徳規範を教える教育やしつけによる倫理的価値基準が内在化したもので、倫理的価値基準に従って自我を監視し、自我を健全な働きに導くもの。超自我は自我の一部として最終的に形成された領域で、道徳性・倫理性の根源。また、真・善・美の理想追求に向かわせる働きもある。

    ④エス・自我・超自我の関係
      エスは欲望そのもので、その欲求を満たそうとする=快感原則です。
    超自我は、道徳性・倫理性の源で、道徳的融通のきかない、ある意味頑固親父のような、または優等生のような感じ。
      自我は、エスの奔放な欲望と超自我の頑固な倫理性の間で、現実に合わせてどのような行動をとるか調整コントロールするはたらき。

      このエスと超自我のバランスが崩れ、超自我が強くなりすぎて、エスの欲求を抑圧すると神経症になるということです。

      エスはすべての人にほぼ同様に備わっているものですが、自我や超自我は人によってそのタイプや高低のレベルは違っています。つまり、エスはもともと備わっているもので、自我や超自我は育ち・成長のなかで形成されてくるので個々に違いがあるということになります。

     

心理学講義の動画

  • 心理学講義(理論編)『レジリエンス 立ち直る力』(2107年8月14日 64min)

      レジリエンスとは、衝撃的な出来事や困難な状況、ストレスを受けたときに、立ち直る力、回復力、復元力という意味で近年メンタルヘルスの領域で注目されている言葉です。

      ストレスを受けた時に、落ち込みやすい、なかなか立ち直れないという人は、「レジリエンスが低い」ということになります。ストレスに強く、また、立ち直りが早い人は、「レジリエンスが高い」ということです。

      レジリエンスが低い人は高い人と比べ、ストレスのダメージを受けやすく、精神的疾患に罹りやすいということが言えます。

      講義では、心理学の立場からでなく、仏教の教えの観点からの考察・解説も行われたいへん興味深い内容となっています。

    1.レジリエンスとは
    2.レジリエンスが高い人と低い人はどこが違うのか?
    (1)レジリエンスの高さとポジティビティの量の関係
    (2)立ち直りの早い人は、否定的感情とともに肯定的感情も経験している
    (3)立ち直りは身体の状態とも関連している
    (4)安定した心
    (5)視野が広く、解決策を複数考えつく
    3.レジリエンスが高いこととポジティブ・シンキングは違う
    4.レジリエンスは高めることができる
    5.レジリエンスを高める方法

     

  • 心理学講義『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)』前編(2017年1月1日 78min)

      今回の心理学講義は、行動主義心理学の「第三世代」である、『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)』です。行動主義心理学の「第三世代」は、このアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)はじめ、マインドフルネス認知療法などですが、これらは、アクセプタンス(受容)とマインドフルネスに重点をおいています。

      ACTは、つらい思考・感情があっても、それらに対する効果的な対処法であるマインドフルネスの技法を使い、それらに巻き込まれることなく、やるべきことをやり、意味ある充実した生活(人生)を送れるようにするセラピーです。

      「マインドフルネス」という言葉を聞かれたことのある方も多いかと思います。アメリカで流行しているメンタルヘルスの技法で、ストレスへの対処、うつ病などの心理療法、企業のメンタル教育(googleも取り入れている)など幅広く使われています。

      講義では、マインドフルネスについて、どういうもので、どのような効果があるのか細かく解説しています。また、マインドフルネスの源流である、上座部仏教のヴィッパサナー瞑想についても言及しています。

      そして、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が目指す、つらい思考・感情に翻弄されずに、やるべきことをやり、意味ある充実した生活(人生)を送れるようになれる方法について解説しています。

     

  • 心理学講義『選択理論』(2016年8月13日 89min)

    今回の心理学講義は、精神科医ウイリアム・グラッサー博士によって提唱されたカウンセリング手法であるリアリティセラピー(現実療法)の基本理論である選択理論についてです。

    選択理論は、自分で選択可能な自分の行動や思考を適切に選択することで、人間関係その他の問題を改善する理論です。「他人を変えることはできない。変えることができるのは自分だけ」という理念のもと、他人を思うようにする、コントロールするのではなく、自己コントロール=行動・思考の選択により、幸福へ至ろうとします。

    第一部においては、感情に流されずにコントロールする方法を、選択理論の行動の仕組みにもとづいて学んでいきます。


  • 心理学講義『私に価値があるの? ~自己存在価値を求めて~』(2016年5月1日 72min)

    今回の心理学講義は、「自己存在価値」がテーマです。

    人は誰でも、自分は価値ある存在であると感じたいという欲求を持っています。
    それをなかなか感じることなく生きていくのはつらいことです。ですから、人が生きるうえでは、「自分が価値ある存在である」と感じることは必要なことであり、それを求めて人は生きていると言っても過言ではありません。

    講義では、自己存在価値が低い人の特徴やその要因、どうすれば自己存在価値を高めることができるかなどを話しています。

     

  • 心理学講義『愛着理論(前編)』(2016年1月1日 85min)

     

    ◆愛着とは◆

    仏教では、愛着は煩悩の一つで、根本的な3つの煩悩のうち貪り(貪:とん)といわれるもので、苦しみを生じさせるものとされます。

    心理学的には、養育者との情緒的な特別な結びつきのことを言い、乳幼児期の赤ちゃんが心身の健全な成長のために必要な安心・安全を提供するものとします。
    この心理学講義では、この意味での愛着についての話です。

    「愛着理論」の資料、後半の講義の動画データは販売しておりますので、ご希望される方は、下記連絡先にお願いいたします。shop@hikarinowa.net

    「愛着理論」の教本は>>>こちらでご紹介しています。

     

     

  • 心理学講義『ポジティブ心理学』(2015年8月13日 69min(前編))

    ポジティブ心理学

    ポジティブ」という言葉から受けるイメージは、何でも楽観的に捉え、明るく元気という「空元気」、あるいは「現実逃避(軽視)」して明るく振る舞うという軽い浅薄なイメージがあるが、この心理学でいう「ポジティブ」はそういうものではありません。現実に苦難があればそれを直視して乗り越えて行こうという積極的なものである。にこにこ笑顔の元気さだけを扱うものではない。
    この点、誤解されやすいネーミングだと思われる。

    ポジティブ心理学の分野のなかで、ある意味中心的な理論として「拡張-形成理論」というものがある。心理学博士のバーバラ・フレドリクソンという人の唱えた学説。

    この他、ポジティブ心理学の理論として有名なものは「フロー体験」というものがある。フロー体験とは、「そのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している状態で、そのことがすばらしくうまくいっている状態」をいう。

    心理学講義の資料は、1000円で販売しております。
    ご希望の方は、shop@hikarinowa.netまで。

     

  • 心理学講義『アドラー心理学』(2015年5月2日 93min(前編))

    アドラー心理学

    アドラーは、欧米ではフロイト、ユングと並び「心理学界の三大巨頭」と称され、絶大な支持を誇る。
    A.アドラーは、1902年にフロイトが主催するウィーン精神分析学会に参加した古参の精神分析家であり、フロイトとアドラーは対等な共同研究者として精神分析の発展に力を尽くした。

    アドラー心理学の基礎理論は、精神医学や臨床心理学よりも学校教育や幼児教育、生涯学習といった教育分野、自己啓発の分野に大きな影響を与えた。それはアドラー心理学では、"やる気・意欲・継続力・目的意識"を指導者などが後押し(サポート)しながら高めていこうとする『勇気づけ』が重要な役割を果たしているからであると思われる。

    アドラー心理学では、「勇気づけ」を重視する。現代のさまざまな問題行動の背後には、勇気をくじかれ、やる気、意欲、目的意識がない状態がある、と考える。

    心理学講義の資料は、1000円で販売いたします。
    ご希望の方は、shop@hikarinowa.netまで。

     

  • 心理学講義『ユングのタイプ論』(2015年1月1日 70min(前半))

    ユングのタイプ論

    2つの一般的態度  外向-内向
    4つの心理機能  思考・感情・感覚・直感

    <このテーマを選んだ理由>
    ①自分の成長のために
    ユング心理学は、対立する要素(例えば、陰陽)のバランスをとること、人格の偏りをなくし、バランスのとれた全体性へ向かうことを人間の成長と捉える。
    人格の対極の要素(例えば、外向-内向)のバランス、調和を実現していくために、今の自分の状態を知ることが必要で、その手がかりとしてこのテーマを選んだ。

    ②他人の理解を深めるため
    自分への理解を深めることは、他人への理解を深めることである。自分とタイプが違う人の物の見方・考え方を知ることで、他に対する理解がすすみ、寛容になることができる。

    心理学講義の資料を希望される方には1冊、1000円で販売します。
    希望される方は、shop@hikarinowa.netまで。

     

  • 『心理学講義:自己愛について(2014年8月13日 93min)』

     

    山口指導員と上祐史浩による対談形式での心理学講義「自己愛について:第1部」の動画となります。

    現代は自己愛型社会とも言われ、自己愛の強い人が多くなっていると言われている。
    そこで、普段の生活でも出会う自己愛の強い人への対処や自分自身の改善のために役立つようにと、このテーマを取り上げた。

    第1部の講義では、

    1.自己愛人格の特徴とその心理的メカニズム
    2.自己愛の強い「困った人たち」の例
    3.自己愛の強い大人になってしまう発達過程からみた心理的要因

    について語られています。

     

     

  • 『心理学講義:「認知療法」の理論と実践(2014年5月2日97min)』

    心や言動の歪みを修整し、バランスをとることを助ける認知療法は、物事の捉え方が心の状態を決めると説き、仏教や道教の思想とも一致し、東西の叡智を融合させた、深い智恵に基づく講義。

    心理学の研究家・全米ヒプノセラピスト協会の認定セラピストの山口雅彦指導員の講義と、上祐代表の対談形式で分かりやすく解説

    >>動画はこちらから

     

ヨーガと心理学

  • 1.ヨーガとは?

                                              山口雅彦

     

    大乗仏教の代表的派として中観派と唯識派という大きな派があります。唯識派とは、唯識ヨーガ行派といわれます。
    唯識は仏教の深層心理学と言われていて、その派の名前からもわかるようにヨーガの行を通じて得た瞑想体験の中から心の解明をしていきました。このように、心の解明とヨーガ行というのは関連しています。

  • 2.サンスカーラ

                                              山口雅彦

     

    いつも、ある状況になるとパターン化した決まった行動や心の態度をとってしまう、自分ではそんな態度とりたくないのに・・・・。

  • 3.卑屈さと心のコントロールの関係

                                              山口雅彦

     

    ☆「ヨーガの八部門」

    さあ、それでは自己の真の主として、自己を振り回す習慣化された反応パターンをコントロールするための実践方法である、ヨーガの八部門をみていきましょう。

  • 4.禁戒と心のコントロールの関係

                                                                                        山口雅彦

    それでは、五つの戒と心のコントロールと関連した意味合いをみていきましょう。

    ①非暴力
    他を傷つける心の状態は元々不安定です。他を傷つけるときは、背景に怒り・憎しみがあります。怒りや憎しみに支配された心は調御しがたく、そして、暴力をふるうことにより、心はさらに昂ぶり、後悔の念が生じたりしていっそう不安定になります。

  • 5.知足と縁起と感謝

                                              山口雅彦

    2.<勧戒>

    禁戒というのは、「~してはいけないよ」、というもので、勧戒は「~しなさいよ」というものです。

    禁戒を守らないことで、卑屈さが増すという話をしました。それとは逆に勧戒を実践することは、自己評価を高めます。悪いことをすれば、自己評価が下がり卑屈になり、心は不安定になります。善いことをすれば、自己評価は上がり卑屈さは減り、心は安定します。

     

  • 6.調身・調息・調心

                                              山口雅彦

    よく調身・調息・調心といいます。目に見えない、つかめない心にいきなりアプローチすることは、むずかしいことです。それに比べ身体や呼吸をコントロールすることの方が簡単です。ですから、まず身体・呼吸をコントロールし、それを通して心にアプローチしていきす。調身・調息によって調心をはかるというわけです。

死生学

  • (工事中)

    ※工事中

    (このコーナーでは、死生学に関する記事を掲載していきます)

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